書物蔵

古本オモシロガリズム

文学全集の研究

へー、こんな本が出てたのは知らんかった。
・文学全集の研究 / 青山毅. -- 明治書院, 1990.5
西部古書会館で出あった森さんに示唆されて購入。1500円。いま日本の古本屋をみると、5000円ぐらいつけてるとこが多い(^-^*)
目次をみると、オモシロそうである。森さんは月報を研究したものであると言っていた。
けど、NDLのデータ見たら、やっぱしヘンテコな主題標目をつけているねぇ(・∀・`;)

s1. 文学 -- 歴史 s2. 日本文学 -- 歴史 -- 明治以後 s3. 叢書 NDC:902

まずもって、昭和期に日本で出版された文学全集についての本なんだから、標準列挙順序に従って要素を並べ替えると。「全集 -- 文学 -- 日本 -- 歴史 -- 昭和時代」となって、つぎに標目表の指示「 叢書 ← 全集」に従って、先頭の「全集」は「叢書」に置き換えられ、しかるのち、標目表の序文などの指示に従って、「全集 -- 歴史」が第一件名になるのが正しい。
この本を主題分析した人間は2重、3重のマチガイを犯していて。
まずもって、要約主題が何か、の把握に失敗している。
文学全集という種類のシリーズについての本なのに、国非限定の文学、世界の文学全般についての歴史の本だということになってしまっている。それに付加的に第二件名、第三件名をつけてごまかそうとしているが、こういった、無意味な件名が無用に多くつくのは、ノイズでしかないし、なにより、作業者が要約主題をつかみそこねている何よりの証拠なんだよねぇ。
もちろん、s1. 叢書 -- 歴史としたうえで、明治期以降の日本文学一般についても判る本だから、ということで付加するならば、件名標目表自体の不備(地理区分や時代区分が不自由)を補う面もあって悪くはない。きちんとした件名をつけるなら、第二、第三、おおいに結構だと思うんだけど、むやみに多くつける人にかぎって、単に自分の頭のほうが混乱していることがほとんど。
時代区分もヘン。第二件名に明治以後なんてあるけれど、明治文学や大正文学を収めた全集が出たのは昭和時代なわけである。ま、これは第一件名の選定に失敗した段階で自動的に将来したマチガイとも言えるけれど。
NDCが902、世界文学史なのもおなじ論理で将来されてしまったマチガイだけど、ぢゃあこの本のNDCにふさわしい分類はどれ?といったら、実はこれはNDC序文の中途半端性によってなかなか定まらない。とりあえずの答えとしては、ある本についての本は、もとの本と同じ分類をつけるという原則にしたがって、908、つまり世界文学全集そのものにつける分類と同じものをつけることを推奨しておきたい。
いま、webcatなどを見ると、910.031がついてるとこがあるねぇ。これは要約主題の把握時に、2重にちがう把握をしている(あえて間違っているとは言わない)。
まず、世界文学全集と日本文学全集を一緒にあつかっていると見ずに*1、日本文学全集のほうが主体だ、という判断をすることで、910になる。
そして、現物の中をパラパラみると、たしかに書誌っぽい。というのも、文学全集の月報の書誌一覧がついていて、これは文学全集についての本ではあるのだけれど、各種文学全集の月報の書誌として<も>使うことができるのは確か。ただこれは、本についてレファレンサー的な再定義になってしまっておるから、キャタロガーとしてはあまり望ましくない判断だと思う。もちろん、この本をレファレンス・コレクションに加えようと思ったレファレンサーが、908(ないし、918)にバッテンでもして、903.1(ないし、910.031)をラベルに書いてつけるのならまったく問題ない。
いまゆにかネットを見ると、宮崎県立のみが908をつけている。NDLのマチガイやTRCの特殊解釈に抗して、ちがうNDCをつけるというのはなかなかむずかしいことがわかる。

*1:逆に、世界文学と日本文学を一緒に扱っているとみるならば、そしてこちらのほうが妥当だが、上位・下位関係にあることを一緒に扱っているものは上位に分類するという通則にしたがって、910でなく900になる。