書物蔵

古本オモシロガリズム

近代奥付研究史概観

なんでもいちおうチェックすべきは、それまでに誰か論じてないかということ。
いちばん安易なのは、雑索を論題で引いて見ること。それでめぼしい文献にあたる。
奥付についてもきっと誰かがどこかで「研究」しとるんではないかと。そんで、ちと見てみた。古いほうから今回の戦時中の定価や番号に関係しそうな、近代の奥付の文献のみとりあげてみる。

  • 松本幸一「奥付の定価表記に関する史的考察」 『大学図書館問題研究会大図研論文集』( 18) [1996.02] 1〜13 うーん、これは表記について、というより表記の根拠法令とかについて一通りまとめたもの。史料へのレファレンスがないんで、ちと実証的とはいいかねる。
  • 田中栞「四面書架(1)〜(2) 本の奥付は信用できない」『紙魚の手帳』 (26) [2004.5] p.10〜19, (28) [2004.9] p,14〜23 現物及び国会の近代デジタルライブラリーの奥付を使っての実証的考察。わちきこーゆーの好き。奥付だけでなく、国会(正確には帝国図書館)が押印した「受入印」(の日付)を援用して考察するところがオモシロ。その手があったか(゚∀゚ )
  • 石田豊『書籍探検隊が行く! 奥付の変遷を追え!」『ず・ぼん』(10) [2004.12] 140〜159 図版たくさん。うーんこれは考察というより図版をみて楽しむという感じかしら。

ただどの文献にもいえることは、他の奥付文献について言及しているものはほとんどないということ(それは高梨さんのも含めて)。孤立してやっとる感じ。ほかにも亡くなった佐野眞さん(って有名な作家でないほうの)が『文献探索』に書いてるみたいだけど未参照。
奥付を分析する場合のキホン枠組みとしては、江戸時代からの出版取締り用のフォーマットであること、それが法定されていたこと、法規が廃止された後も、出版業界の慣例により続いていること、ってところかしら。つまり、かつて法定されていたが、いまは慣例でしかない、ということですな。