書物蔵

古本オモシロガリズム

庸村センセキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

本物の左翼図書館人たる浪江虔氏の『図書館運動五十年』読み進む。
友達の飯沢匡に寄付してもらったり、獄中読書法(レファ本の読み方)とかオモシロいんだけど、戦争がおわったあたりで気をぬいて読んでたら…

この本〔農村圖書館(河出書房1947)〕の原稿は、実は戦時中に、七、八分通り書き上げていた。まだ出版のあてが全くないのに書いたのは、義憤を感じたからであった。

ん? 義憤とな

農村図書館がいかにあるべきあについては、一九三五年(昭10)以来の念入りな準備、開館してからの経験、「巣鴨」と「豊多摩」でのきびしい自己批判をふまえて、かなり明確なイメージを作りあげていた。ところが大政翼賛会にいる某氏の、全くいいかげんな本が出版されたのである。書名も正確には憶えていないが、農村の読書を扱ったものであることは間違いない。私の目から見て全くの落第品であった。これに対する怒りを心の中で燃えたぎらせながら、出版のことなどほとんど念頭におかずに、書いた。書かずにいられなかったのである。(p.109)

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! 国民読書!
大東亜図書館学本の多くを集めたわちきであれば、ここでいう「全くいいかげんな本」で「書名も正確には憶えていないが、農村の読書を扱ったもの」で「全くの落第品」で、「怒りを心の中で燃えたぎらせ」ちゃうような本が、どの本なのか解るですよ(゚∀゚ )アヒャ
大政翼賛会にいる某氏」とは…
十中八九*1、庸村先生ですなぁ(*´д`)ノ
因果はめぐる風車!
浪江虔による『農村図書館』誕生のウラに、『国民読書と図書群』があったとは。

こんなにも実証的な本だから逆にわかること

ところでこの本、非常に実証的につくられてて、自分が保存してた一次資料を使ったり、国会図書舘の参考書誌部にレファレンスを依頼したり、図書館史家の石井トン先生に質問したりしてるんだけど、なぜだか、この本の執筆動機になったという本来重要な本のことだけは調べてないんだよなぁ。
おそらく何十年も前の「敵」だから調べるまでもないということなのだろう。
こっそりゆーと(・∀・) 日本図書館史研究の最大の欠点はここ。仮想敵のことをろくすっぽ調べずに、批判したつもりになっているところなのだわさ。
でも、この図式って、仮想敵(あるいは現実の敵)の分析結果を捻じ曲げて、勝ったつもりになってた某帝国の軍閥とまったく同じだよね。
たまに「いや、抗戦力調査によれば相手は負けてくれません」とか「開戦したら2年しか持ちません」とかいう同朋が出てくると、謀略で陥れようとしたり無視したり。
平成の日本人も昭和前期の日本人も、同じですがな。

結論はサカサだが論点が正しい

本のハンドリング(p.117)、利用者の迷惑行為禁止条項の反憲法説(p.262)、県都の市立問題(p.291)などいろいろオモシロい。
正直、わちきの社会観やいまの日本の社会状況とのズレからくる

不同意部分が結構あるが、それでも出してくる論点そのものは的確。凡百の左翼人士とはおおいに異なる。

立派なり。
とくに法制に関するセンスはさすが(結論はわちきとサカサが多い(・∀・))。
これはご自身が治安維持法その他でひどい目にあったという体験によるものだろう。

発展段階史観に消された「私立公共図書館

あと図書館史的には、1960年、はじめて「私立公共図書館部会」が図書館大会で開催されたというのがオモシロ。

このあと「私立公共図書館連絡会」が結成され、たしか興風会図書館の佐藤真館長のお骨折りで『日本の私立公共図書館一九六一』という、非常に詳しい名簿が出来た。

あっ、これホスィー、と思ってOPACをみるも、大学や国会にはなし。

*1:のこりの可能性としては、昭和17〜18年のみ文化部にいたあの人。