書物蔵

古本オモシロガリズム

Studyのstudyの嚆矢:楠瀬日年

スタディスタディってのは、スタディ(書斎)のスタディ(研究)ってこと(・∀・)/
ネット上にある「美術人名辞典」(思文閣)によれば。

篆刻家。明治21年(1888)高知県生。名は恭卿、別号に鵲巣・坎?等。度々渡支し、説文を章炳鄰に、篆刻を呉昌碩に学ぶ。著に『篆刻新解』がある。大津絵の研究家また自作者でもある。

とあり、基本的な情報がわかる。

半有名人は没年がワカラナイ

これはありがたい。しかしこの情報の出典はどこから? 出典の記載など、ネット情報資源は紙の冊子で慣例化してることがまだ慣例になっていないのが弱いところなのだなぁ。書きっぷりからいって、当時の専門人名鑑あたりが出所のような気がするが… それとも断片的な一次情報からまとめたの? だとしたらすごく偉いけど。
図書館情報学的にオモシロな『書斎管見』を掘り出してから、こンお人の伝記について調べたいと思ってた。
で。
この前、ようやっと少しだけわかったよo(゚ー゚*o)(ノ*゚ー゚)ノ とくに没年の時期がわかったのは、かなりの発見ではないかと。半有名人ってのは、生年は判りやすいけど没年は判りづらいのだ。

超裏ワザで手がかりを

中嶋宗是が、自著『本の醍醐味』(1981)で楠瀬に言及してたことがわかっていたけど、これがまた、中嶋さんってば自著に書いていた以上のことを、雑誌記事のほうに書いていたのだわさ(×o×)
そ・れ・も!
日年晩年に直接つきあいのあった人物からの直話!
そう。
「日本の古本屋」を記事索がわりに使う http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20070101/p3
でわかった『大阪手帖』19(11)(1974.11)。
これにようやくあたることができた。
いやはや。
やはり手間をかけて原典にたちもどるってーのは、重要なんだねぇ。
学者のやる「研究」はいうに及ばず、わちきみたいな日曜研究家のやる日本図書館史学史*1研究においても然り、ですな。
そーゆー意味では、<「日本の古本屋」を雑誌記事索引がわりに使う>という超ウラ技を編み出せねば、いつまでたってもワカランかったんですなぁ(*゜-゜)
わちきは「日本の古本屋」の過去データから次のように予測したけど

中島宗是「書斎管見と楠瀬日年」『大阪手帖』19(11)(1974.11)p.3- 

じっさいには、

中島宗是「書斎管見と楠瀬日年」『大阪手帖』19(11)(1974.11)p.18-20 

ですた。古本屋さんは「計3ページ」の意味で「三頁」と記述してたわけ。

日年さんの出生

上記記事によれば。

著者楠瀬日年は、大阪曽根崎のお茶屋の息子として生まれ、無欲恬淡、篆刻家として生涯を京洛の地で終えた。(中略)
大阪には埋没していて発掘しなければならない文人、通人がたくさんいる。
楠瀬日年もその一人である。が、いま私はここで語る資格はない。自分の所持している彼の一冊の本もろくに目を通していない上に、なんらの資料ももちあわしていないからである。(略)

「日年」のヨミ(中嶋さんの推論)

一生を清貧に甘んじた楠瀬は、名を恂といい、日年と号した。にちねんをひねと読む人もあり、定かではないが、日輪のにちを号とするのが日本人の慣わしと思えばやはりにちねんが正しいのであろう。

へー日年を「ひね」って読む人もいたんだ(・o・;)
でもやっぱ「にちねん」でよさげ(^-^*)

晩年

晩年は、不遇のうちに京都妙法院近くの病院でひっそりと息を引取ったという。昭和三十七、八年ごろのことである。

1962〜63?ということになる。これははっきりいって大発見o(゚ー゚*o)(ノ*゚ー゚)ノ

情報源

文末に「島田福蔵氏の思い出話を参考に」とあるので、おそらくこの島田福蔵という人物が日年の晩年に周辺にいたのであろう。中嶋宗是さんの書き方はエッセイ調なんではっきりとは断定しかねるが、書きっぷりからみて、この掲載記事の伝聞・推定のところは、この島田という人物(ちょっと調べたが不明)からの聞き書きと思われる。
日年の親の家業(お茶屋)や、交友(犬養毅近衛文麿、杉山寧画伯の篆刻をしたという)、奈良の古瀬窯で陶芸にもいそしんだという日年の人物情報のところ。

他にも

日年さんの最後といってよい著作『』には、すこしだけ自分に関する記述が(かきかけ

関連過去記事

『書斎管見』は「差し支えなし」 http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20060203/p2
【掘出】 楠瀬日年 『書斎管見』 昭10 http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20050205/p2

追記(2013.5.8)

実は拙ブログ記事中、比較的アクセスがあるのが、楠瀬にちねんについてのエントリ。
ゆえに後学のためコメント中で言及されてをる文献情報につき追記するなり。
どうやら教授された本は次のもののやうである。。。
岸浪百草居 [画]. 生誕120年館林に生まれた日本画家・岸浪百草居展 :. 群馬県立館林美術館, c2009 KC16-J1276
岸浪, 百草居, 1889-1952 || キシナミ, ヒャクソウキョ というのは知らんかった。

*1:うわー、狭すぎ