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古本オモシロガリズム

青聨、日図研、ニット学?…(かきかけ

いろいろ算段して1次資料に迫ろうとしたんだけど、できず。
そこで次善の策として、日図研50年史にあたってみた。うひゃ。史料が引用されている。

『50年史』で答え合わせ

『50年史』のほうは、40年史年表とひっそり歴史観がかわってて、昭和21年からということになっている。英文並列タイトルが、『The history of the Nippon Association for Librarianship 1946-1996』(いっぽうで40年史の年表は『日本図書館研究会40年史年表 : 1943-1987』)。
それでも50年史のほうでも「前史」として昭和18年のことが本文中で言及されている(この部分の担当は岩猿敏夫氏)。「非公式の結成は戦前の1943年にさかのぼる」と。
そしてそこに、昭和18年の会報からの貴重な引用があるのだ。

青聨『会報』に載った、日図研の名称の由来

今後も□々の会合を継続したいが、何か新たなる名称を附してはとて、「図書館員懇話会」等は如何と提案された処、既に館業に直接しない者をも含める意味では図書館員と限られた様な名称より図書館を対象とした名称にしたほうが誰でも入れるのではないかとて、ついに日本図書館研究会の名称が選ばれ、今後はこの名称のもとに例会を開くことに決定し、形式の定まるまで戸沢青聯理事員主席に当分幹事役をして頂くことになった(『(青聨)会報』16(2)(1943.12.30)p.14)*1

なるへそ。
わちきのコトバでわかりやすく言い換えてみると…

青聨は、(間宮の意向で*2)ヤメになっちゃうけど、それでも会合は持ちたいね。
じゃ、その、青聨じゃない新しい会に名をつけたらどうだろう。青年図書館員の会だったんだけど、青年でもなくなってきたし*3、聯盟もまずいから*4、「図書館員懇話会」でどうだろうか。
いや、でも「図書館員」ってコトバを名前にいれると、現在、図書館員をやってる人しか入れないみたいだと改めて気づいたよ。だってまえの仲間の多くは時局柄、兵役や徴用で図書館員をいまはやっていないし、よく考えたら他の職業の人たちも入れたいなぁ。とすれば、「図書館員」はだめか。
じゃ、「図書館」ではどうだろう。懇話会の参加者をあらわすコトバじゃなくて、懇話の対象をあらわす「図書館」なら、「誰でも入れるのではないかとて」

日本図書館研究会の名前が選ばれた。

と、昭和18年の年末の『会報』に書いてあるわけだ。
で…
堅実な歴史学ならば、こう書くことになる。
史料には名前の由来は書いてあったが、なぜ「日本」なのかは書いてなかった。だから、この「日本」が日本主義の「日本」なのかは判らない。
と。
これでおわり
って、まさかね(o^ー')b

それでも残る疑問。

よく見てよ。最初の案は「日本」なしの「図書館員懇話会」なんだよ。
「誰でも入れるのではないかとて」と、「日本+図書館+研究会」は、論理的に2つのことをすっとばしてつながっている。そう、1)「懇話会」がなぜ「研究会」になったのかと、2)「先頭になにもついていなかった」のに「日本」がなぜついたのか、ということ。
1)はとりあえず、青聨の研究的実績(NDC, NCR, NSHの開発)と気概を反映しようとしたということでかたづけていいと思う。
2)ですよ問題は。
これも気概の表れとして…。
実績的にはどうかといえば、青聨自身が認めているように「京阪神ノ図書館オ中心ニ,十有六年以来伝統オ受継ギ」なわけで、「近畿図書館研究会」「西日本図書館研究会」と名乗る実績はあっても、空間的に「日本」を名乗る実績はなかった。
だからこれは、なんらかの気概をしめすコトバだと解釈するしかない。

3つの解釈

もちろん、たんに日本全土から研究したい人よっといで、という意味で「日本」だったかも知れず(イ)、さらにまた、たんに「日本図書館<(研究において劣る)協会>」に対抗する意味で、日図協の前半「日本図書館」をパクっただけなのかもしれず(ロ)。
でもなー、わちきは1年前まで京都で「日本図書館学会」が活動していたことを知ってしまったからなー。
日図研の日本は、日本主義的な日本図書館学会のむこうをはってつけられた、という選択肢(ハ)がアタマにうかんでしまったのであった…。
ホンモノの日本図書館学会の「日本」は、単なる空間概念ではない。
「図書館の日本化」(by三田全信)の日本なのである。日本主義なのである。
だとすれば、選択肢(ハ)が不幸にも?証明されてしまった暁には、日本図書館研究会の「日本」は、民主日本、平和日本の日本ではなく、日本帝国、大日本、の日本ということになってしまふ。
60年間、それを知らずに日図研の会員はいたということになってまう(゚∀゚ )アヒャ

*1:引用者においてカタカナをひらがなに、助詞を表音表記でない歴史的かつ現在のかなづかいに直した

*2:これはわちきの解釈ね。用紙割り当て7割減を間宮が飲めば存続だけはできた。間宮の、一本木な性格が解散につながったのだねぇ(・∀・`;

*3:これはわちきの推論

*4:これは単に論理の問題