書物蔵

古本オモシロガリズム

読んでみた古本屋社会学本 う〜んこれは

ある人の示唆をうけ,読んでみた。古書業界の社会学的記述がほしい!と叫んだ直後だったんで。「日本の古本屋」開発状況についてはまとまってて読みやすい。ありがたい研究だと思ったけど…
花岡幹明;桃塚薫「組織における「オルト・エリート」と情報化について:古書業界の事例を中心に」 『豊橋創造大学紀要』(6) p.97-111(2002)
えーっと学術論文としては,破綻してると思うぞ。というのも…
この「オルト・エリート(alt. elite)」なる概念がくせ者。ここでは「仮性選良」と呼ぶね。わたしの理解では,価値秩序の周辺部にいて中心を攻撃する頭のイイ人たちって感じ。それがめでたく成り上がると,「仮性」をやめて「(真性orただの)選良」になるっていうモデルらしい。
なんてことはない,革命家のこと。フィデルくんは成り上がって革命家をやめたけどチェくんは永遠の革命家だったというわけ。仮性くんはIT技術で中央にいる真性を攻撃し,社会や会社の活性化をはかるというモデル。なんだかなー(これは別の研究者のモデルらしいが)
そんで,仮性選良の例として,日本の古本屋のシステム構築者をだしてきてるんですけど…
彼らは,老舗の古書店の2代目の店主で,80年代の初めからパソコンやワープロを用いているパワーユーザーであった」って…
おいおい,保守も保守,本流のそれも2代目って,ぜんぜん仮性選良じゃないじゃん。古本業界のホンモノのパワー・エリート(真性選良)としかいいようないよ…
せめて電脳化を押し進めたのが新興サブカル専門店なら,モデルに嵌るのにね。
あえて古書業界でIT仮性選良をさがすとすれば,文献内の註10で簡単にふれられている「M社」がまさにそれ。日本の古本屋は革新的M社の進撃にたいする保守本流からの防衛戦とみるのが妥当。
それに註の10でちゃんと「1995年,日本で最初にインターネットによる古書販売を行なう」って認定してるし。そこまで気づいていて,どーして…
M社って,株式会社紫式部だね。ぜったい。
このまえこのブログの「ネットで古本を買う方法」で,M社はいささか分が悪くなってきてると書いただけに,むむ,もうちっと正当な評価をしてあげるべきと思ったよ。M社こそ仮性選良なり。
(蛇足)
古本業界をアカデミックに記述するのはとても期待されますが,論理の破綻にきづいてしまったもんですまんそん。もし万一著者さんが見ちゃったらごめんなさい。