書物蔵

古本オモシロガリズム

出版史料としての『逓信公報』

何から説明しやうか。さうぢゃ。政府がやっとる新聞『官報』から。
じつは大正期までの官報は、かなり新聞に近いもんぢゃった。法令布告のほかに雑報がいろいろ載ってて、そん中には新聞雑誌の発行部数もあったり、実は発禁本のお触れも明治30年代までは載ってをったのぢゃが… それからは載らんやうになってしもふた。
でぢゃ。
さういった出版物情報が官報に載りつづけてゐたら、とっても便利と思はんか。
実は官報記載の出版物記事にかはる資料があるらすぃーのぢゃ。それが、

遞信公報 

おそらく発禁情報が載るのは大正期や昭和初期からだと思はれるのぢゃが、いまスグ、ネットで見られる国立公文書館のものを見ると、発禁情報はまだないが、「第3種」の情報がすでにして記載されとる。
各号の末尾「彙報」に「○第三種郵便物認可」として一覧がでてくる。

題号/認可年月日/記載事項ノ性質要領/発行定日/発行所/発行人住所氏名

といった情報がわかる。刊行頻度が変わったり、認可取り消しの情報も載る。
「○第三種郵便異動」、「○第三種郵便物認可失効」という柱で一覧される。

書誌

遞信公報 遞信省総務局 発行所変更:→遞信省→朝野新聞社→日報社→遞信省
1号 (明19.4)-
 (?)
逓信公報
 (1)1912-
 (?)1926
逓信公報
 (1)1926ー
 (2972)昭12.1.7〜
 (5001)昭18.11.1
運輸通信公報:通信版 運輸通信省通信院
 (1)昭和18.11.1〜
 (391)昭20.5.19
逓信公報 内閣逓信
 (1)昭20.5.19〜
 (115)昭21.6.29
逓信公報 逓信省
 (1)昭21.7.1〜
 (490)昭24.5.31
国会図書館所蔵
遞信公報 遞信省総務局  1号 (明19.4)-383号(明治24年4月)
国立公文書館の所蔵
(1)明治19年04月
〜(882)明治26年06月 デジ化済み
(?)昭和09年05月28日
(?)昭和12年05月29日
(3933)昭和15年04月01日
(3941)昭和15年04月11日
■所蔵 Cinii 全国逐次…5vには記載なし
1886-1912(1-346,350-380,381-474,476-530,532-542,544-586,588-649,651-705,707-741,743-749,751-1103,1105-1218,1339-1358,1360-1439,1441-2060,2319-2341,2343-2367,2369-4248,4250-4794,5993-6160) 明治新聞雑誌文庫 Z69:Te29
1888-1891(165-201,203-383) 京都大学 吉田南総合図書館図 P||T||||三高和
1912-1912(1-125) 明治新聞雑誌文庫 Z69:Te29
1912-1912(2-124) 慶應義塾大学 三田メディアセンター
1913-1913(273) 一橋大学 附属図書館図・本館分類 Gg:19
1914-1914(421-712) 東京大学 総合図書館 ZN:297
1915-1916 (959-1078) かんがるー文庫¥24,000 B5判、穴あけ紐綴→家蔵
1918-1926(1861-1869,1871-1879,1881-1997,1999-2664,2666-2752,2754-3082,3084-3200,3202-3363,3367-4245) 京都大学 附属図書館BNC BNC||テ||010
1926-1937(1-1472,1474-3269) 京都大学 附属図書館BNC BNC||テ||010
1940-1941(4008-4302) 東京大学 経済学図書館図書 47L.4:1:"year"

■参考文献
・水谷昌義「運輸通信公報運輸版(鉄道公報)の全目録--昭和18年11月1日から昭和20年5月18日まで」『東京経大学会誌. 経営学』(252), 79-181, 2006-10-25 ※鉄道版のみについてだが、発行形態など参考になる。著者は交通博物館所蔵分を閲覧。ネット上にあり。
・続逓信事業史資料目録. 第3集(逓信公報記事索引). 郵政大臣官房史料編集室, [1958] 318p ;D1-H91 受入印見ると、この本ヘンなんだよね。昭和36年に調立が受入れたのに国会図書館全体の本になったのは平成時代。

翌日追記

森サンから非常に有益な情報が寄せられた。

 ちょっと檢索してみました。
 出版史料としては、使はれた前例があるやうです。
 杉原四郎曰く。
「明治新聞雑誌、文庫所蔵目録『東天紅』(1941年. 1974年復刻, 明治文献)には,「府県別新聞雑誌創刊年表」がある。それは,明治年間に3府43県で発行された新聞雑誌名を府県別に創刊年月順に配列したものである。それは明治新聞雑誌文庫が実物を所蔵するものだけではなく、「明治17年以後は,実物でなく,官報や逓信公報,広告等に拠ったものもある」(同まえがき)」 http://hdl.handle.net/2433/79795

 また所藏は、交通博物館より郵政博物館(前身は逓信総合博物館)の方が良いのではありませんか。『郵政博物館 研究紀要』第5號に曰く。「郵政博物館には、逓信省発行時代から逓信院発行時代に至るまで、全ての『公報』が所蔵されている。」
 http://ci.nii.ac.jp/naid/40020047255
 http://www.postalmuseum.jp/publication/research/-5.html
 http://www.postalmuseum.jp/publication/research/docs/research_05_03.pdf

要するに出版史研究に「逓信公報」を使ったのは、かの宮武外骨に先例があると1990年に杉原四郎が気づいてゐたこと。
揃いが現・郵政博物館で閲覧できるらしいこと。これなら、アワテテ大正期の逓信公報を買わなくてもよかったね(σ・∀・)