書物蔵

古本オモシロガリズム

明治の新聞紙面の構成→3面は「雑」だった

当時の新聞は、一枚の紙を二つ折りにした四ページ建てが普通であった。一面には社説や政治向きの記事など、二面には官庁筋の情報、経済記事など、そして三面には市井のできごとや犯罪記事、花柳界の情報、役者や力士のうわさ話などが掲載されるのが一般的なパターンであった。推測するに、三面記事という呼称が生まれるのもそこからであろう。それは現在の新聞の社会面と考えてさしつかえないはずである。
玉木明『ゴシップと醜聞 : 三面記事の研究』(洋泉社, 2001.3)p.58

しかしどうやら、この、1面=社説・政治、2面=官庁、経済、3面=社会、というのも、明治20年代からだとニッポニカはいふ。

三面記事 さんめんきじ
日刊新聞の社会面記事のこと。日本の新聞の紙幅、形態が整いだした明治20年代から、1、2面には政治・経済などの硬派記事、3面には社会ダネの軟派記事が掲載されるようになったところから、この呼び方が始まった。(略)現在ではむしろ懐古的ことばの感じが強い。[高須正郎] 日本大百科全書

で、頭のいい読者なら、ぢゃあ、4面はなんなのとか(おそらく広告)、それまではどうだったの、とか疑問がわくはず。
おそらく1面は明治20年代までは「官報」で、いまは「官報」は政府の雑誌『官報』のタイトルになっちまってるけど、最初は新聞紙1面の欄名だったのだ。
でも「面」の名として名前がついたのは、社会記事の載った社会面。
で社会記事って何かといへば。

しゃかい‐きじ[シャクヮイ:] 【社会記事】〔名〕
新聞や週刊誌などで、社会に関するできごとの記事。特に政治・経済・文化問題を除いた雑多な記事をさすことが多い。
三四郎〔1908〕〈夏目漱石〉一〇「新聞の社会記事(シャクヮイキジ)は十の九迄は悲劇である」

よーするに、「政治・経済・文化問題を除いた」その他記事(σ^〜^) 、雑(σ・∀・)

さんめん‐きじ 【三面記事】〔名〕
(新聞紙が四ページだった頃、第三ページが社会面だったところから)新聞の社会面記事。社会の雑事、雑話を扱った報道記事。雑報。
国民新聞‐明治三六年〔1903〕四月三日「富樫万次郎、菊池悟郎の諸氏政治経済と所謂三面記事に任じ」
*永日小品〔1909〕〈夏目漱石〉金「劇烈な三面記事(サンメンキジ)を写真版にして引き伸ばした様な小説を」

思うに、編集部の部編成、政治部、文化部、社会部などと連動している可能性や、ジャンルとしては、政治、経済、文化、その他(社会)といった分類があるのではあるまいか、といった思いつきが思いつく。

他のジャンル

けいざい‐めん 【経済面】
(2)新聞などの経済に関する記事をのせる紙面。
*現代術語辞典〔1931〕「経済面 一般財政・経済の記事を載せる新聞のあるページ」

現在では

図解入門業界研究最新新聞業界の動向とカラクリがよーくわかる本:
https://books.google.co.jp/books?isbn=4798023914
秋山謙一郎 - 2009 - ‎プレビュー
多くの新聞では、第 1 面が、内容問わず重要な記事内容、第 2 面が政治、第 3 面が経済... ...、そして十数面に社会面という構成になっています。

追記:面欄の設定と、新聞DBの記事分類がダメな件

おそらく新聞のページ編成は、当初、ページとイコールになってたのが、途中で順序だけ保存したまま器械的連動しなくなったのではないか。
上記以外に、総合面の運用(政治や社会がらみでも、重要なネタは移植する)とか、硬派デスクとか軟派デスクとか組織名に2大別ジャンル意識が今でも残ってをるやうなのでそれを加味するとかうなる。

硬派記事(初期一面、二面)欄・官報
  総合面
  政治面
  経済面
軟派記事(初期三面:その他)欄・雑報→社会面
  文芸欄→文化面
  運動面
  地方面(地方版)
  ラ・テ欄
広告(初期四面)
  一時期1面に(〜昭和12)

ほんとは、明治20年代まで(1枚時代)、昭和12年まで(広告1面時代)、昭和27年まで(テレビ欄拡大)などに時代区分したうえでそれぞれに表を用意すべきなのぢゃが。
また、

派>面>欄>記事

といった階層がおよそ上位下位で仮定されるが、「面」や「欄」が成立した時代の呼び名で複合的に残ってしまい、たとえば「テレビ欄」とはいうが「テレビ面」とはほとんどいわなかったり、それこそ3ページ目でないのに「三面記事」などと明治半ばの呼び名が残ってたりするからむずかしい。もちろん、ちゃんと整理すればいいだけの話なのだけれど。
ところがぎっちょん、ヨミダスはへたに主題と、記事ジャンル(面の名称といってもよい)をごちゃにしたので、記事分類キーはまったくといっていいほど検索につかえなくなっちゃっているというのは、コマッタもの(#+_+)

新聞DBの功罪

記事があったあったとさわぐまへに、どの面にあったかが重要。
たとえばサ、藤岡淳吉の日本焚書事件(昭和8)ってあったけど、結局、なかったことにされた要因のひとつに、記事が社会面っぽい面にのったということがありはすまいか。落ち目な新聞『時事新報』が飛ばし記事としてうけとられた可能性を考えねばならん。
しかしさういったことを考えるには、上記のような面・欄の知識がなけりゃあならん。