書物蔵

古本オモシロガリズム

考証する古本屋

おおむね好評な雑誌『古本屋』に。。。

青木さんの書きまくりに、いささかいかがか、と思ふてをったけれど、青木正美氏の出していた雑誌『古本屋』を見るに、やはり青木さんあってこその古本屋文献なのだなぁと考へを改める。

このまへも、『古本屋』に「麒麟の会」のことが書いてあると『悪い奴ら考』の江東文庫伝にあり、そのうち『古本屋』大揃いを買はねばの、と思ふ。
そんなことを考へながら、この『古本屋』、最終号だけ手許にあるので、ぱらぱら見る。読者に寄せ文をしてもらったところがあり、まあ、おほむね褒めてんだけど、あまり業界や購買者の裏面を公刊するのはいかがか、てふ意見がちらほらと。

裏面を記述すること

へぇ、わちきなぞ、事実は――悪いことも含めて――あるひは事実を記述することは、なによりも尊ひと思ふてをるのぢゃからして、古本てふ存在自体が裏面たるものの、売り手といひ買ひ手といひ、裏面をきらふ向きがをられるといふのハ、ちといかんのぢゃないか、ぐらひに思ふのだけれども。
さういへば、古本屋が裏面の暴露で云々と、どっかでなにか読んだなぁとて、つぎの雑誌を書架から取り出して読む。
ふと思ひついて、書架から出せぬやうになってハ、本末転倒なれバ、また古本を古本屋に払い出すしかないなぁ… やはり図書館学系か、と思ふなり。それはともかく…

  • 阿部秀悦(青猫書房)「書狼伝説」『ユリイカ』29(7)=(389)pp.112〜120(1997-06)

いやもうこれ、ものすごい。小説っぽいのに、全部(?)実名。小寺謙吉、鶉屋などなど(@_@;) 実名小説???(#+_+)
いやさこのしゅうえつさん。ほかにもいろいろ書いとって。

阿部秀悦というのは目録専門の古書肆「青猫書房」を主宰する御仁であるらし。

筆禍

ところがネット上には、上記のユリイカ記事が筆禍となったという噂がある。

Salon de 書痴 過去ログ 2002年11月

  • 古書目録について 2 投稿者:cogito  投稿日:11月 8日(金)07時44分05秒
     大塚さまの御質問の序でに、古書目録に係りまして“あいのり”の御質問です。 私の大好きだった青猫書房の目録はまだ出てゐるのでせうか。2、3度注文が途絶えたからなのか、それともひょっとして御店主の発表された文章をHP上で誉めそやしたのが悪く思はれてしまったのか、店舗のあるお店だと即、自分が「切られ」たことがわかるのですが、あの良心的な目録が届かなくなったことだけは大変さびしく思ってゐるので、みなさまに一寸お尋ね申し上げます。まだ頂いてゐる方はおられますか
  • 村八分 投稿者:東  投稿日:11月 8日(金)09時15分06秒
    cogito様
     ここの常連とまではいきませんが、お世話になっている東と申します。A書房の目録については、私は一度ももらったことがありませんが、知人がもらっていると少し前に言っておりました。恐らくまだ出しているのではないでしょうか。 ただ、例の「ユリイカ事件」により、A書房は古書の世界で村八分になっているとのことです。従って目録のレベルが全然落ちてしまったそうですから、もらわなくても大して影響はないでしょう。ご安心を。
  • あんまり可哀相。 投稿者:cogito 投稿日:11月 8日(金)09時29分58秒
    東様
     心痛みます。つまらない質問をして申し訳ありませんでした。ユリイカ掲載で青猫さんのことを知り、以後に連絡を取って私は目録を頂きはじめましたのですが、 “目録の質が落ちた”とするとそれ以前の目録はもっと素晴らしいものだったのでせうね。 ありがたうございました。(東様の御了解を得て関係投稿削除して頂いてかまいません>管理人さま)
  • 自業自得 投稿者:管理人  投稿日:11月 8日(金)10時45分35秒
    cogito様
    A書房の件については小生も多少存じておりますが、他店の仕入れに関して憶測でしかも無断で公にするのは商人の道に反した振る舞いであって、東様のいう「村八分」も当然と思料します。しかも、日本はそうは言ってもこういうことに甘いから、本人は蛙の面に何とかでもやっていけます。目録のレベルの問題は恐らくそれとは関係ないと思いますが、関係あるとしても自業自得というものです。なお、これがヨーロッパでしたら、業界から抹殺されることは必定なのですが。 それから、小生は他人を誹謗中傷するが如き書き込み以外は、投稿者が要望する場合を除いては削除はしない方針です。これは、自由闊達な意見交換の場でいたいからに他なりません。従って、cogito様は小生に判断を委ねられていらっしゃると文言から解釈し、削除はしないことと致します。趣旨をご理解賜ればと存じます。

うーん(゜〜゜ ) 商人道徳かぁ…
わちきはもと史学の徒であってみれば、なによりも事実が大事で、生ける人間の名誉やプライバシーも守られるべきだけれど、それは世俗の世界での話で、歴史的に――それは業界史・郷土史レベルでもよい――重要であるなら後からその縛りは解除されるべきとも思ふてをる。
さうでなければ、この世の文書館、歴史家はみな、反道徳的存在とならん(そうだ、という考へ方もあり)。