良いのに悪い、あるレファ本から武者惣蔵
- 作者: 宮城県姓氏家系大辞典編纂委員会
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1994/06
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
この「人物大辞典」、期待させたんだけど、結局一部の県しか出ず(´・ω・`) でもたまたま宮城県は出ていたので参考になる。参考にはなるが、実はこの事典、引くのにひと手間かかる、というのも、本文が人名編と姓氏編の2部構成になっていて、人名そのものが出てこなくても、姓氏編のほうに微細な人物がでてくるからである。結局、2回ひかないとならない。律儀な日本人は――ってか、一般件名(事項名索引)をうまくつくるノウハウが出版界に根付かなかった日本では――書名とか、人名とか類別をたてた部分索引を作るばかりであるが、実はこの慣行、「引く」という観点からはよろしくない。文字順(まあ、ニフォン語のバヤイ、読み順にならざるをえんが)に混排するのが本来はよいのである。
まあレファ本に関する批評(愚痴ともいふ)はともかく、このp.897cに
武者 むしゃ 【一】〔略〕 【二】亘理郡高須賀村端郷荒浜(亘理町)浜屋敷に元和年間から浜屋敷に住む武者主計を先祖とする武者家がある〔以下略〕
という項目があり、こそに惣蔵の名が(って名だけだが)見える。
武者惣蔵。その書痴っぷり
円満なる福次郎さんが――あゝ、古書会館まはりでご尊顔を拝することはもうできぬ(´・ω・`)――「敬遠」してた天目山荘こと武者惣蔵。その書痴っぷり、まさしく書物に関する痴れ者ぶり――ん?(・ω・。) これは半分ほめとんのよ(。・_・。)ノ ってか自己批判も兼ねてc(≧∇≦*)ゝアチャー――が、かの岡野タケオのそのものズバリ「書痴」なるエッセイに活写されとる。
- 岡野他家夫「書痴」『政界往来』30(9) pp.6〜8 (1964-09)
ちなみに岡野も武者に直接会ったことはなく、おそらく手許に残った手紙の紹介をしている。その中身が、「驚くべき身勝手なこと」だったのだが、
だいたいこんな申出でを突然に、文通も面識も全くない人にするのに、返信切手も同封しないことなどもおかしいのだが、書痴もまた愛書家にはちがいないので、古書典籍を愛するこころに免じて、丁寧な回答をした
のだそうな。
その突然で「驚くべき身勝手な」申し出というのは、岡野所蔵の天下一本『社会主義詩集』を、定価の百倍で買うからすぐ送れ、というもの。売らないなら貸せ、ついてはすぐ送れ、というものでもあったc(≧∇≦*)ゝ
要求事項自体が本質的に身勝手なのもあるが、文面がまたすごい(@_@;)
武者惣蔵は東北でも有名なる大立者と世評せられし信用家なれば日本国中の蔵書家より先陣にドシドシ送られをり候 それも天月〔ママ〕山荘が信用ある結果かと愚考仕居候
自分のことを「有名なる大立者」とし、「信用ある結果」、「ドシドシ」本を送られていると自己紹介するとは、こりゃあ、かなりのタマである。
岡野さんは他にも数名、書痴を紹介している。
「純情派の書痴」として折居忠八なる印刷所経営者の趣味人もいたとか。岡野所蔵の永井荷風「すみだ川」各ページ色刷りカット入り版を所望して、「三年の間、月に二、三回は必ず手土産持参で懇願にかよいつず〔ママ〕けた」という。
福次郎さんの証言?
ぐぐぶくると。。。
戦後、関野さんがアオイ書房を手伝っておられた頃、愛書家で奇人・変人の天目山荘、武者惣蔵を知り、のちに「天目山荘」という絵入小説を私刊された。斎藤昌三にいわせると、天目山荘は本気違いで、彼から手紙がくると不愉快だから読まずに破り捨てた、との