書物蔵

古本オモシロガリズム

善意の学校教育

原武史『滝山コミューン一九七四』を半分まで読む。「滝山コミューン」というのは原氏の造語で、ヤル気満々で善意の左翼教師によって、一時的に出現した集団主義全体主義)的現象をこう呼んだもの。
糾弾調でなく抑えた筆致で十分読ませる。原氏は『大正天皇』で世間に注目されたけど、ルポルタージュ的なものに才があるのだろう。実証史学というより、物語る才能というか。おもしろいけど危険なり(『大正天皇』にトンデモの気があるうわさは友人から聞いていたけど、はてなキーワードに文献典拠があったのは意外であった)。
原氏は瞬間的にだけど国会図書舘にいたという。ただその時の話というのはほとんど残っていない(し、氏自身触れていない)。図書館員というのはカキモノをしないので、学者に流れてって成功したといえませう。学者はものを書いてなんぼだからね。
佐藤卓己先生の書評(読売、でもわちきは朝日の読者だから東京堂掲示で読んだ)で買ってみようかと思ったんだけど、わちきもまた、1960年代生まれなのでいろいろ身につまされることあり。当時のわちきは『赤旗』の熱心な読者だったので(小学生なのに!(・∀・))、なんだか妙なことを卒業文集に書いてしまったですよ。
怖いものみたさで読んでいるけど、展開としては思ったとおり。雰囲気としては、そう、マンガ『20世紀少年』に近いものがある。あれはフィクションだけど、こっちはノンフィクション。
学校社会に理想社会を実現するというのは、困ったもの。学校は読み書きそろばんをキチンと教えてくれればいーよ。
追記)感想
なんだか読んでいたらやっぱりこわくなってしまった(・_ ・;
林間学校が予想されていたよりもあっさりと幕が引かれ(それでもまあすごかったが)たあとで、自己批判を迫られるところとかこわい…
まあ一種の集団ヒステリーなんでしょうが。
わちきも以前の職場で集団ヒステリーにあって往生したことがあったよ。いまから14年も前のことだけど、その日のことはよく憶えている。わちきは「人民裁判事件」と呼んでいるが。
ずっとずっと以前、友人Cから聞いた話だが、知人A君がこう言っていたという。
書物奉行さんは、あんなにいろんなことを知ってるのに、なんであんなにヤル気がないのだろう…」
って、A君は文革のあとに入ってきた人だったからなぁ。一見フツーのにーちゃんやねーちゃんが集団ヒスに投げ込まれると紅衛兵になるのです。A君からはフツーにみえる人々が、わちきには紅衛兵にしか見えんからなぁ。