書物蔵

古本オモシロガリズム

官立エロ本図書館(昭和5年)

ひさしぶりにエロ本図書館ネタ(゚∀゚ )
エロ本図書館は実際に計画されんとしていた。それも内務省によって。(昭和5年のこと)

「エログロ保管の官省図書館」
霞ヶ関の役所街に出現する新内務省内に、我国初の官省図書館を設けることになつて、目下内務省警保局図書課ではこの計画を進めて居る、それは全国の図書出版物の総管理をやつて居る同省へは納本をして集まつて来る数は、昨年の如きは単行本と雑誌で約六万九千件、新聞は一万件にも及ぶが、この内発禁の憂目に遭つたものは上野図書館にも送られないで、同局図書館に保管されて居り、エロ・グロのプロマイドは最近まで司法省に送付されてゐたのを、今度から中止して、これも同局に保管さるゝことになつたが、この図書館は保存が目的だけに閲覧者は学研的な人々といふやうな、内務省が制限した特定人だけに閲覧させる筈であるといふ(『〔東京書籍商組合版〕出版年鑑(昭和6年版)』p.29より)

これは、大正6年ごろの「内務省所蔵図書開放」計画(100万部規模)(田中1989)の再来だね。百万部の検閲本(正本)がまる焼けになって(大正12年の震災)以来、正本も東京市立にあげてきたんだけど、やっぱり禁止本は内務省にどとまっていた。それを、研究目的に限り公開しようというもの。
でも、この話は聞いたことないから、やっぱり百万部図書館計画のときみたいに「予算会議」に提出されたらあっさり除外されちまったのであろう。おそらくこの時の禁止本コレクションが、のち米軍に接収されLCに収まり、そして返還されたという国会図書舘の禁止本なのであろうが、果たして全部残っているのかどうか。ここでこの図書館が成立していれば、本当の官立エロ図書館になっていたはず。

出版統計への言及

記事中、「昨年の如きは単行本と雑誌で約六万九千件、新聞は一万件にも」いう言い回しがあるが、前回言ったようにこのような言いまわしは最大限正しい言い方なのである。
記事は昭和5年のことを言っており、その「昨年」なので昭和4年分の出版統計(出版法による数値)をみると、68,854件である(昭和3年は60,179件、昭和5年は72,154件)。
ほんとうは「新聞は一万件」の中に、かなりの雑誌が入っているはずではあるのだが。ともかくも。

単行本と雑誌で○○件
新聞は○○件

といういいまわしが当時の出版業者にあったという例証になるなり。