書物蔵

古本オモシロガリズム

くりだされる陰謀史観にゲラゲラ笑う

このまえ高田馬場BIGBOX展でひろった文庫本を読了す。

偽史冒険世界 / 長山靖生. -- 筑摩書房, 2001.8. -- (ちくま文庫)

親本は1996年に出たもの。あとがきで著者の同業者たる地下鉄サリン事件関与者についての言及があるのも時代なり(サリン事件は,いまでも当時のことを思い出すよ。きっと死ぬまで忘れんだろう)。出たときからいつか読もういつか読もうとおもいつつ,けっきょく文庫本がでたときも読まず,今回,読んだのだった。
読み出したら,とまらない。おもしろい。ゲラゲラ笑ってまう! 帯にもあるように「デマはほんとにオモシロイ!」のだ。
さまざまなトンデモ論説を紹介していくなかで,著者がいちいち合理的なツッコミをいれるところがまた。なんど吹き出したことか(≧∇≦)
けれど,解説の鹿島茂が指摘しているように,著者は研究対象に対する愛がある。たんにゲラゲラ面白がっているだけではない(もちろん,それもある)。
わちきも図書館本をいろいろ集め,とくに戦後の左翼的言説には陰謀史観(図書館が発展しないのは国家のせいor天皇制のせい)がそこはかとなく,あり,それを面白がっているとこが多分にあるのだけど,長山氏のように,ゲラゲラ笑ったあとで,それでもなお嫌いではないのだ。
あとがきには謝辞があるけど,長山氏の師匠スジの横田順弥氏などが出てくるのは自然として,紀田順一郎さんも出てきて意外ながらも妙になっとく。これもおなじ氏の『おたくの本懐』(ちくま文庫)の「コレクターシップの系譜」図(p.200-201)に,紀田さんがでてくたのも,実際に交渉があるからなのねん。福田久賀男氏ってのは有名なひとらしいけど良く知らない。ぜんぜん本を出さなかったひとみたい。Publish or perishだのう。やっぱり本をあんまり出さないと,言説空間での「みかけ」のプレゼンスが弱くなる。