書物蔵

古本オモシロガリズム

読んでいた小説本が実は出版史小説だった

 しばらく前,神保町の@ワンダーランドで買った文庫本を読んでいる…
井出孫六『アトラス伝説』文春文庫 1981
 中編小説が3つ。直木賞を受賞したという表題作を読み終えて,まんなかにある「『太陽』の葬送」を読み始めたら,なんとこれ,大橋佐平(博文社の創業者)についての小説じゃないの… 知らなかった。というか,しばらく前から小説は読まない方針だから(つまり小説史にはきわめて疎い)しょうがないけどね。出版史の小説ってのはわちきの盲点のひとつ。
これ,アット・ワンダーで420円だったんだけど,出版史がらみということで,この値段でもお値打ちのような気が。あそこは絶版文庫の宝庫なんだけどあまり買わないのだ… でも文春文庫の古いのって意外と古書市場にないしね。
この本について、ひとこと図書館資料論的なつっこみをいれさせてもらうと…

アトラス(atlas)はマップ(map)じゃありません

ってなに言ってるかわからないでしょ。
英語じゃ、atlasは、冊子、とじられた地図の束にしか使わないのだ。一枚ものの地図は、mapというなりよ。まあ日本語じゃあ、どちらも漠然と「地図」という一語ですませてるけどね。
「アトラス伝説」って話は、地図をつくる役所(陸軍陸地測量部)での事件が題材になっている地図小説。そこでつくってる官製地図はmapですから、atlas伝説というのはちぐはぐなのだ。
〜〜
そいえば、どーゆー筋のオハナシだったのかを聞いて,それにあたる本の書誌をお答えするって業務は,たしか(図書館の)児童サービス論で専門語があったような気がするが… 思いだせん。
まあ,児童にかぎらずその手の質問は大人でもあるわけなんだけど… 現状では,読書家で博覧強記の文学ヲタクがお答えすることになるわな。あるいは、あらすじつきのデータベースでキーワードを工夫するとか。
でも… それはあくまで現在の日本ではの話。