書物蔵

古本オモシロガリズム

ISBN論争の珍書

八重洲ブックセンターにいったら,ポット出版の『出版流通合理化構想の検証:ISBN導入の歴史的意義』湯浅俊彦が並んでた。パラパラみるも,う〜ん,これは珍左翼というか残留左翼本だねぇ。いや,左翼がいけないとはいわんが,あつめてきた資料を鵜呑みにしてるのでは。
まずもって,当時は言説空間自体が非常に左傾化?していたのだから,それをさっぴいて考えるべきでは。例えばさ,なかに国会図書舘のこととか出てきてるけど,「自民党が支配する国会図書舘」とかいう当時のISBN反対派の意見をそのままだしてきて,あたかも国家権力がISBNを通じて思想の国家統制をしようとしてたかのような伏線にしてる。
あのー,いちじは首相までやった海部俊樹文部大臣が,「国会図書舘は左翼の巣窟だ(要旨)」と(これまた当時)言っていたのとサカサの言説なんですけど…。
いったいどっちがホントなのか。自民党の手先だったのか左翼の巣窟だったのか。でもわちきだったら,海部センセのお言葉から,すくなくとも自民党の国会図書舘ではなかったと結論づけるがね。
まあ,そういったことから始まって,加藤一夫(東欧研究家)センセの国会図書舘本をそのまま典拠にするとか,かなりアヤウイ。だってあれ,たしか館内同人誌か職員組合ビラに欠いたもんの集積だよ。そーゆーものとして読まなけりゃ。もちっとおちついた筆致でやってもらいたい。その手の資料ならば,やっぱある同人誌に載ってた加藤典洋氏の「バカ事件」とか,個別具体的で些細なオモシロ事件を拾う材料にしなけりゃぁ。