書物蔵

古本オモシロガリズム

 学者の図書館談義(その3)いまそこにあるエロ本

そんでもって井上氏はこう続ける。
自分は発禁本を見に国会図書館へ通ったが,そこでは特別閲覧室で読むことになっていた,友人にも紹介したら,そこの閲覧票の見本に自分の名前が書いてあった,と。発禁本の一部がエロ本だったので,それを全部読破したかったそうな。
ふーん,もし閲覧票の件がほんとうだとしたらちょっと問題ですなー。でもセンセのいう「エロエロオンパレード」って本はないみたい。これのことなのかなー? なんだかあやしい…
花嫁オンパレード / 南竜一. -- 二松堂, 昭和6. -- (エログロ叢書)
もちろん,戦前期発禁のエロ本では,現在の実用的価値はおおいに減殺されているだろうから(^-^*),性風俗研究の一環としての資料読みなんでしょーけど。
実際,日文研OPACから「井上文庫」とおぼしき人体写真集(おもに女性)を表示させてみると(ブログにご教授いただいたのだ。感謝),下品なものはないねぇ,ってゆーか,いま高値をよんでいるものばかりではないかいな。井上センセは,いかにもエロエロ辞さずてな感じで語っているけど,実はレトリックなのでは。さらに古本屋の目利きもできる感じ。
「図書館とエロ本」というお題は,シロウト受けするだけでなく,実は図書館研究でも理論闘争に役立つよ(実はこの記事自体がそれへの伏線なのだ)。
それはともかく,とりあえずここに実際にエロ本を所蔵している図書館があるわけだ。いまそこにあるエロ本! えらいぞ国会図書館。あそこの従業員はエロエロなのか?(んなわきゃーないよね)
しかし,これがまた研究されたことがない主題なのだ。
わての管見のかぎりでは,そこのエロ蒐書についてまともに言及した専門誌記事はひとつしかない。記事ってゆーか,ごく小さいコラム。
「Yの悲劇(NDLこぼれ話)」『みんなの図書館』1982.8 p.11

NDLC(国立国会図書館分類表)によるY分類には,なぜか悲劇の形がつきまとっている。〜〜『Y17』児童書(は)〜〜金網の中で安らかに眠っている*1
『Y85』同じく金網本だがY17とは正反対の性格を有する資料−つまり成人向本である。紛失が多いので金網入りしたとか。首尾よくこの中にもぐり込んだはいいが,夢中で読んでいるうちに閉じこめられて一夜を過ごした職員もいたとか

Yってのは国会の分類記号でYではじまるもののことらしい。NDLってのは,あそこの職員が自分の役所をいうときの隠語? National Diet Libraryってのが英語名らしいんだわさ。Dietってのは英語で北欧の議会のこと。大蔵省や財務省がMOFってのはわりと有名だけど,NDLってのは聞いたことないよ…
んー,このコラム自体には著者が書かれていませんねー。このコラムがあるページは,M山というひととO和田という人の共同論文になってるけど。これらの人はどうやら国会の職員だったみたいだから,このコラムのなかみもそれなりに信憑性あるよ。
このほかにもここのエロ蒐書について書いた記事がいくつかあるけど,みんな寄贈者や利用者からの観点のもので,管理者がわってのはこれしかないねー。
2ちゃんねるにも,ご大層にも独立したスレッドが立ってるけど……,具体的なカキコはぜんぜんないねぇ。あそこは一般人?が何に興味があるかってことは判るけど,そこから真実や実態がわかるってもんじゃないから。

国民図書館のエロ蒐書

まー,日本の国立図書館のエロ蒐書について書くのはこれくらいにしておいて*2,なにが言いたいのかとゆーと,日本国にかぎらず,
各国の国立図書館には大抵,エロ蒐書もある
とゆーことなのだ(^-^*)
わちきの知ってるかぎりでは,オランダ(証言あり),フランス(なんかで読んだ)とか。たしかスペインにもあったはず。英米については…,知らない*3。まー米国は文庫本(paper back)とか(目録をとった後)捨てちゃうらしいから,エロ本はさいしょからないのかもしれんが…。
もちろん,古式ゆかしく,文字文字のポルノグラフィーから,ホトガラヒのポルノまで表現形式はいろいろあるけれども,とにかくなぜだかエロ本が国民図書館に収蔵されているという事実がある。
でも,ふつーの公共図書館(市町村立)にはナイよね。少しはあるかもしれないけど,それは,一括して寄贈された誰々文庫の一部だったりとかして,たんに,エロ本として収蔵したという事例はないはず。
なんで国民図書館だけは,エロ本がエロ本として収蔵されているのでしょーかねー? 次回はこれについて書いてみようかと。
(この項つづく)

*1:いまは国立ドコモ図書館にあるらし笑

*2:要望があればまたやりますが…

*3:日本図書館学は英米のことばかりやっているのに,不思議なことだす。