昭和二十二年ごろ,当時旧制高校生であった私もまた,この図書館にかなり足繁く通った記憶があるのである。まだ焼け跡のなまなましい戦後二年目の東京でめぼしい図書館といえば,上野の帝国図書館(現在の国立[ママ]図書館)をのぞいては,この大橋図書館と京橋図書館ぐらいのものではなかったろうか。(中略)
大橋図書館はその後,所蔵本をごっそり東京のどこかへ移転したはずであり,その移転先にも一度,たしかに私はおもむいたことがあるはずなのだが,記憶の欠落というのはふしぎなもので,それがどこであったかを完全に私は失念しており,いくら想い出そうとしても想い出せないのである。」(「埴谷雄高のデモノロギー」より)
マルジナリア / 渋沢竜彦. -- 福武書店, 1987.11. -- (福武文庫)
文中の大橋図書館の移転先は,東京タワー脇の「三康図書館」ですね。行ったことあります。静かなところです。大橋図書館の図書館経営論上の意義については,そのうちまた。