書物蔵

古本オモシロガリズム

「ボール表紙本」という語の初出は?

「ボール表紙本」という語の初出は?
森さんに教えられた次を読むと。

  • 鈴木 徳三「明治期における「ボ-ル表紙本」の刊行」『大妻女子大学紀要 文系』(24), p1-4,図3p, 1992-03

ボール表紙本の呼称、並びに定義に関する記述は、筆者の管見する限り見当たらなかった。それと言うのも、これらの造本は、単に厚手の板紙を表紙に用いたに過ぎず、余りにも安易な洋装本の模倣であって格別の注釈や解説を必要とせず、

とある。
次の事例から、大正末に明治文学の回顧記事で説明的に、「ボール表紙」という言葉が使われ、それが古書店明治文化研究会などで「ボール表紙本」という複合語になったようである。
同時代にこの言葉はこの様式の図書に使われてはいないようである。
渡辺太郎は「ボール本」というさらなる縮約形で伝える。

事例:辞典項目

ボールぼん(ーー本) ボール表紙に石版画を貼つた明治新作物や翻訳小説。兎屋本もそれ。(コマ70)

書物語辞典 - 国立国会図書館デジタルコレクション

鈴木徳三も同じ取りこぼしをしているが、『書物語辞典』は近代書誌学の用語集として使える。

事例:記事論題レベル

記事レベルだとざっさくプラスで。

図版 出版ポスター(話の種、怖るべき子供たち)、国際問題を扱ったボール表紙本
無記名
昭和7年7月1日,書物展望,第2巻第7号

明治のボール表紙本時代
石井研堂
昭和16年8月1日,書物展望,第11巻第8号

国会図書館デジタルコレクション 煙皿 明治のボール表紙本時代
石井硏堂
1941,書物展望, 11(8)(122)

この次は鈴木(1992)になってしまう。

事例:本文レベル

最後に頼るグーグルブックスで、なるべく古くまでたどらんと「本」を外して「ボール表紙」で探すと、1927年の本が見つかる。
https://books.google.co.jp/books?id=USpHp3GKPVIC&pg=PP63&dq=%E2%80%9D%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%A1%A8%E7%B4%99%E2%80%9D&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwj39dGyq5PmAhUryIsBHbD-A2c4RhDoAQhGMAU#v=onepage&q=%E2%80%9D%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%A1%A8%E7%B4%99%E2%80%9D&f=false
明治小説の起源について、新聞の続きものがそうだとしつつ

此の体裁の小説本は四五年間は継続し之を明治式合巻と称へる人もあるやうだが、これが後には石版画ボール表紙の西洋綴りとなり、三変四変して博文館や春陽堂から出版する菊判やまと綴の小説本となつたのである。(p.41)

あと、荒木伊兵衛「日本英語学書志」創元社, 1931 が書誌記述に使っている。

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392 ページ
英寧教授本(槍入)一冊岩井忠想編明治十九年( 1886 )東京盆楽堂務免紙・和装・木版
刷(縦一八・五輝横一二・五輝)十三葉。km英語通排一冊設楽勝美編明治十九年( 1ss )
東京井上勝五郎版洋紙・洋装・ボール表紙・銅版(縦一二・六輝横九輝)八十頁。英學早
...
394 ページ
洋紙 に作文、文法、譚文例、用字 394 洋紙・ボール表紙・活版刷(縦一五・三輝横九・八
編)八十八貢。 The Royal Readers No.1・Tokyo & Osaka・183 %ローャル第一譲本
km)一冊明治十九年( 1886 )東京六合館刊洋紙・ボール表紙・活版刷(縦一七・八輝横 ...
395 ページ
荒木伊兵衛 395 本書は明治三年版を合本して再版せしもの。洋紙・ボール表紙・木版
刷(縦一八・六極横一二・五編)百四十九葉。劉格賢勃斯英文典直譚(シ明治十九年(
1886 )東京欧文書館蔵版劉kmほトル園案内"一#明治十九年(。シ洋紙・ボール表紙・
活版 ...

https://books.google.co.jp/books?id=FP8DAQAAIAAJ&q=%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%A1%A8%E7%B4%99%E6%9C%AC&dq=%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%A1%A8%E7%B4%99%E6%9C%AC&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjuueGUwJPmAhVvxosBHUPVB2s4bhDoAQhGMAU

12/3追記

古本蘊蓄 - 142 ページ
https://books.google.co.jp › books
八木福次郎 - 2007 - スニペット表示 - 他の版
古典社の『書物語辞典』(昭和十一年)には「ボール本」ー「ボール表紙に石版画を貼った明治新作物や翻訳小説。鬼屋本もそれ」とか、植村長三郎の『図書・図書館事典』(昭和二十六年)には「板紙表紙」ー「教科書の装釘又は法帖類の表紙等安価な図書の表紙に ...