書物蔵

古本オモシロガリズム

山田一隆くんとは何者?

またも山田かずたか君を召喚す。
山田くんは自分の組織にちゃんと批判的目を向けていたやうで、ある時、記者に問われてこんなことを言っている。
「巡査の非常識はよく批難される題目であるが遺憾ながら或る点までは事実であって」と、警察官の無教養を認め、かういふ。

故に余は警察官吏職務執行上最も大切なる此常識涵養の一手段として読書の奨励特に新聞紙の熟読を勧めてゐる、即ち論説より電報、雑報広告の末迄も一通り目を通せば、世界の大勢より、市井の些事迄大抵の事は判る、実に新聞紙は之を善読すれば常識涵養の活ける教科書である。
『日本警察新聞』(396)p.20(大正5.6.1)

「善読」(ぜんどく、とルビあり)なんちゅー漢語は日国にもないわさ。さすがもと検閲係長(゚∀゚ )アヒャ
この記事にかずたか君の履歴がある。それを適宜書き直してまとめると。

  • 記者「訪問 東京牛込早稻田警察署長警視山田一隆氏談」『日本警察新聞』(396)p.20p18〜20(大正5.6.1)

福井県生まれ
明治34 一年志願兵(歩兵第二十連隊)
明治36 予備見習士官
明治37.2 将校試験に及第。陸軍歩兵少尉
同年.9 憲兵少尉に転ず。第四憲兵隊附副官
日露戦争に従軍
明治40.10 憲兵中尉に昇進。第七憲兵隊附副官に転じ従七位に叙せらる。
?.4 憲兵を退く。恩給220円下賜せらる。
明治43.6 北海道警部を拝命
大正2.1.10 警視庁に転任、検閲係長(警視庁官房特別高等課)
大正5.4.21 警視に昇進。早稲田警察署署長に栄転。※月日は官報による

大正14年には朝鮮の警察官講習所繁授、昭和2年には統裁官なる役職にいたやうだ。
ああ、こりゃ『日本人物情報大系』で出る人だね。

2020.5.15追記

索引から本体を引いてみる。

人物: 山田一
山田一隆 ヤマダカズタカ 満州編11-583、13-256、13-408

  • 日本人物情報大系 11 (満洲編 1)/ 芳賀登 [ほか]編. 皓星社, 1999.10
  • 日本人物情報大系 13 (満洲編 3) / 芳賀登 [ほか]編. 皓星社, 1999.10

主に13巻のほうによると。
明治14年9月17日生まれ。本籍は福井県遠敷郡雲浜村(うんぴむら)。明治33年県立小浜中学校卒。明治34年一年志願兵として歩兵20連隊へ入隊後、憲兵へ転科し中尉となる。明治40年北海道警部を拝命し函館警察署に勤務し、巡査教習所教官、内務属警保局図書課、警視庁官房特別高等科検閲係長を経て警視となり早稲田警察署長、うんぬん。
やっぱり図書課にいたんだね。しかる後、警視庁でも検閲実務に関係している。