書物蔵

古本オモシロガリズム

書物蔵「屠れ米英われらの敵だ! 分捕れLCわがものだ!`・ω・´)o ……。 ん?(・ω・。)」『文献継承』(18) p.7-17 (2011.4)の後記

『文献継承』がもらえる場所(2011年4月現在)


このまへ、東京堂本店の3Fに持っていった(東京堂ふくろう店から地方小出版・リトルプレスコーナーが元の3Fに戻った)ので、3Fのすずらん通り側階段のとこに出ていた(画像)。そこにチラシとしておいてあるのだ。
神保町に行けない人は、サイト「日本の古本屋」から金沢ブンポ閣に頼むこともできる(100円で)。

気づいたのは5年まへ

拙ブログ読者ならばご存知のとおり、連載「あったかもしれない大東亜図書館学」の第3回目は、「図書館の日本性論争」(昭和16年昭和17年)なのであーる。この論争を起こしたのは増田七郎といふ御仁で、国文学史研究者であり司書でもあった人。今までこの人について研究した人は管見のかぎりをらんのよ(σ・∀・)
この人に気づいたのは、平成18年のことだった……(*゜-゜)

【発見】図書館の「日本性」論争! http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20061117/p1

けどその後、もう5年ちかくほうりっぱなしにしてしもーて、『文献継承』に頼まれた連載のネタにひっぱり出したのは昨年の11月のこと。準備にこんな文献リストを作ったり(^-^;)

増田七郎(1905-1943)のbio-bibliograpy http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20101105/p2

wakkunpapaさんになんだか妙に喜んでもらえたようであった。それを何とか記事にまとめたのは2月のこと。日本や自分が災禍にまきこまれようとはつゆ思わず。これを書いた頃は平和な日本であったのだが。

金沢文圃閣が出してるPR誌

それでも金沢を本拠地とする金沢文圃閣がちゃくちゃくと印刷してくれていた。

金沢文圃閣のホムペ↓
http://kanazawa-bumpo-kaku.jimdo.com/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/

ちなみにこのホムペ、わちきはじめて見た。できたてみたい(・o・;)

戦前期では例外的に幸せな司書

んで(=゚ω゚=) 話を戻すと…
今回の話は、太平洋戦争の直前から戦中にかけて戦わされた「図書館の日本性」論争なんだけれど、その主人公たる増田七郎について調べて、なかなかオモシロかった。
いやシチロー自身は誠実でマジメな人。最初この論争を発見したときには、シチローに常識論的に反論した木寺相模が『書物展望』に書いたほうから読んだんで、シチローのほうを狂信的右翼であるかのように想定してしまったんだけど、きちんと読んでみるといい意味でまったく裏切られた。
というのも、シチローもまた、当時の世界では常識人だし、なによりアタマがいい(って帝大だからアタリマエか)。
男爵家の出で、養子先もお金持ち、かつ家族も仲がいい。お爺さんが作った(!)東京帝大を出てその附属図書館に勤めながら自分の国文学史研究も進めるというとっても幸せな生活を送った人だった。
そんなシチローがなぜ、戦後世界からはトンデモに見えちゃう「図書館の日本性」論を巻き起こしたか?
それは『文献継承』を見ていただくしかないんだけれど、ここでは今回の記事のための調べでオモシロかったことをいくつか。

『増田清三追悼録』

シチローを知るにはもちろん彼が書いた記事をあつめるわけなんだけど、中でもオモシロかったのは、シチローが編集した追悼録ぢゃ。

  • 増田清三追悼録 / 増田七郎編. -- 増田義彦, 1943

これは大洋丸撃沈で戦災死した増田, 清三(1911-1942)を悼んで出されたもの。図版込で、684p.もあるブ厚い本なのだ。国会になく最初は見つけてなかったんだけど、webcatを引いてビックリ。急遽、東大に見に行ったものだった。
久しぶりに総合図書館の中に入り、読書を堪能したことであった。
ほとんどが清三の学生時代の友人や三井商事での同僚たちによる清三についての回想なんだけど、そんなかから編者のシチローについての情報も拾える。
コピーも少ししたけど、このまへ来たときと、複写申請のやり方が変わっていたように思う。具体的には適度に効率化されていた。まぁ実際、国会みたいにシチメンドークサク審査したら、誰も得しないからねぇ(著者でさへ)。

若い惣郷正明を発見

意外だったのは、惣郷, 正明 (1912-1993)‖ソウゴウ,マサアキが増田清三と同窓生の友達だったこと。惣郷の初期コレクター暦の片鱗をうかがえる記述が惣郷本人による記述からうかがえる。

シチローと小川寿一とフモト鶴雄と

戦前でも「日本主義」というのは周辺から中央を攻撃する方便だった。言いだしっぺのシチローは、中央で幸せだったからパターンにはまらんのだけど、連載初回の小川寿一とか、今回再評価したフモト鶴雄なんかはむしろ日本主義のパターンにはまる。今回、シチローの言説を分析した結果、小川たちの「ホンモノの日本図書館学会」にシチローの言説がほぼ確実に影響していたことがわかったのは意外な成果だった。また、読書会の自由性論争という昔から日本図書館史学では有名だった論争(中田クニゾーvs.渋谷国忠)で、石井トン先生によって刺身のつま扱いされていたフモト鶴雄こそ、ほんたうの意味で日本主義者の資格があることが明らかになったことも意外であった。
かきかけ