書物蔵

古本オモシロガリズム

新聞記事にあらはれた、「小通信社」の「情報通信」

昭和13年8月23日の「都新聞」にこんな記事があるという。

お次は街に蔓る”情報屋”弾圧/合法の名に隠れた流言の源を断つ/発禁激増に神経尖る
〔警視庁検閲課では毎月6千件の検閲をしていたが事変で取締方針を刷新すつこととし〕”情報通信”を合法的怪文書として断固取締の鋭鋒を向けることに決定、廿二日朝管下各所の特高係に通牒を発し層一層の視察眼を厳にした。
(新聞集成昭和史の証言. 第12巻. -- 本邦書籍, 1985.12)

警視庁のやってた検閲だから、単行本でなくて、定期刊行物(新聞と「新聞雑誌」など)ですの。
昭和13年の上半期(8月まで)に発禁処分だけでなく司法処分も受けた700件ほどの出版物の大半が、新聞や「新聞雑誌」でなく、「情報通信並びにこれに類似した小通信社発行のもの」であるとぞ。
これらが人心を惑わすから、

この種”情報”を怪文書の捺印で取り締まることになつたものである

といふ。
本文に明示されとらんが、こりゃ、「不穏文書臨時取締法」を適用するということではあるまいか。

「当局談」として、

〔新聞が国策に合わせてきたのはいいが〕、一方情報届がが極めて多くなり、半紙一枚位に謄写刷りで発行するこれ等の情報を読むことが主要業務を担当する人々の日課となってゐることは見逃せない

という。つまり、検閲が大変なので(めんどくさいので)、合法のものでも弾圧するという、はちゃめちゃな論理ではある。
がそれはそれとして、この記事の有益なところはそんなところにあるのではない。
当時、 小通信社が 「情報」といはれる出版物を 新聞紙法のもとで 出版しており、それは、印刷方式は謄写版で ボリュームは1枚程度 であったということが判るところがありがたいのである。

追記(2/10)

のちのやうすけ氏内報によれば、上記、「情報通信」にハ「内報」が含まれていたのではないかと。