書物蔵

古本オモシロガリズム

翻訳文学史の研究はこれから


このまえ、猫猫先生の翻訳家列伝を読んだが、あたかもよし、オタどんも欲しがるという超大型出版が出たやうである。
川戸道昭;榊原貴教「翻訳文学に近代日本の礎を見る:『図解翻訳文学総合事典』全5巻(大空社)の刊行を機に」『週刊読書人』(2823) p.1,8 (2010.1.29)
とてもオモシロい。メモ
明治20年代は、翻訳文学も純文学とひとしなみに扱われていたことを、「現今小説名家一覧表」という明治24年の見立て番付表から指摘
明治30年ぐらいから翻訳が価値的に低いと見なされ始めたらしく、尾崎紅葉など『金色夜叉』に米国に原作があることを隠すようにいなったのではないかと。
柳田泉が戦前、研究用に大量に集めた資料は震災と大戦で焼いてしまい、戦後になって集めても戦前見たものの何分の一かしか集まらなかった話。

翻訳文学史の研究史

明治・大正 「あるにはあったけれども」形にならず
昭和初期 世界文学全集の類が出たときに、翻訳文学史や年表などが書かれ始める。
大戦期 敵性ということで一時、しぼむ
戦後 個別の作家研究として復活
昭和40s 明治百年記念事業の一環でもりあがる 柳田泉の本 NDL翻訳文学目録
その後 またしぼむ。