書物蔵

古本オモシロガリズム

昭和の妖怪と大東亜図書館史の意外な関係

大場利康「満洲帝国国立中央図書館籌備処の研究」『参考書誌研究』(62) p.1-186 [2005.3]
読了す。
結局この世に生まれ出なかった国立中央図書館の話ではある。だから「籌備処(ちゅうびしょ)」、日本風にいへば準備室という語がついている。で、感想はといへば、んー、おもちろかった(^-^*)
この話が論文として成立したのは、ひとえに著者の視点によるものと思う。といふのも著者は、わちきのいふところの「国会附属図書館」の職員さんらし。この、世界的にも例外的な国会附属の国立図書館につとめとることから来る視点がなければ、この主題は平板な事実の羅列に終ったに相違ない。そしてこの視点ゆえに、結論部でいささかの勇み足に陥ってもをるやうに思われ。これについては最後にまた書くが。
本論はどう解すべきか。

建国大学と民生部のシーソーゲームで

1937年ごろに始まった国立図書館構想が、セクショナリズムによる有力官衙同士のひっぱりあいで右に左に右往左往。そのシーソーゲームをヤヨシのみっちゃんを狂言回しとして描いていくというもの。
基本的には関東軍肝いりの特殊官衙「建国大学」と、文部行政を所管する「民生部」のひっぱりあい。どっちも、われこそは国立図書館の設置主体なるぞ、と名乗りをあげてゆずらない。
で、どっちかが勝っちゃえば、話はオモシロくならんかったんだろーけど、この時でてきたのが総務庁。仲裁してとりあえず総務庁預かりになったのが1938年のこと。

総務庁次長・岸信介

ところがこの仲裁が満洲国立図書館計画をトンデモなくおもしろな方向へとおしやっていくのだ。
(かきかけ