書物蔵

古本オモシロガリズム

青木実

青木実氏の『幽黙』,ネットで昨日たのんだら,もう来た(*o*)
まだ『外地・内地』を読み終わってないんであとがきだけ読むと…

本書は,故島田幸二君が,私の二,三十年代に書いて,満洲の「作文」をはじめ,新聞・雑誌に発表した短文から,大別編集して上梓してくれた雑文集で,小杉茂樹君が資金を出し発行所を彼の家において,当処の出版配給会社が二千部の大半を消化してくれた。従って日本の知友の手にも殆ど渡らず,持参することも許されなかったので,平成元年,古書肆「あきつ」の目録に十二万円と売価が出たものである。(『幽黙』あとがき)

とある。

稲村さんによる業績録

この青木実氏(の図書館員としての業績)については,稲村徹元さんが古本共和国 第13号('98)に追悼記事を書いておられる(なぜだろう?)。ネットにもあり
満鉄大連図書館に昭和5年から15年にかけていたこと。昭和25年に国会にはいり,昭和30年からはずっと民間出版物の収集を担当し,昭和50年退官したことなどがわかる。
図書館研究としては,

柿沼介大連図書館長からは「日常の仕事は別として、図書館についての研究をしない」ように見られたので、「これからさき永く研究するつもりで収集していた書物関連の雑誌、なかには当時の金で三十円も出して入手したもの、そのほか明治以来の読書論、読書作法といったものなどを御覧にいれたところ大へん喜んで下さった」経験があったという(「柿沼先生」『旅順・私の南京 ほか十四篇』所収、昭和五十七年刊)。

と,あわてて「日本の古本屋」をみると,5千円つけてるところと1万円つけてるところと。うーむ。

。「旧植民地での出版検閲事情なんてほとんど知られてないし、体験した方の文献もないから、よく記録してくださいよ」などと厚かましく説いた私の願いにほだされたのか、『作文』誌にも当時の関東州庁や現地警察での扱いが、「満州文芸資料」といったコラムの形でいくつか記録されている。

さすが! 徹元さん。本土の検閲だって実態はよくわからないのに,植民地の検閲実態はさらにわらなんもんねぇ。文芸誌『作文』に載った(らしい)「満州文芸資料」って青木氏の私家版のどれかに収録されてないかなぁ?
『外地・内地』にも,単行本を大連警察署の高等係に届けたとある(p.245)。内地では単行本は内務省で,警察にとどけるのは新聞雑誌だったはずだから,内地と外地では検閲制度も違ってたのかな?
この本,基本的には自分史と身辺雑記のエッセイなんだけど,退官まで本は図書館のを借りてすませていたこと(p.235)。高円寺などの古書展に行って本を買っていたこと,などが出てくる。
あと,国会図書舘では職員が本を1割引で買えるなんてことも。へー。
柿沼介にほめられた読書論の蒐集は,おそらく,終戦後の売り食い生活時の古本屋で売ったか(p.233),残してきたと思われる。
終戦前後の話が身につまされる。
ソ連兵の略奪とか…(わちき,いつも思うんだけど,国内左翼の人が帝国軍人の悪行を糾弾するのと同様の熱心さをもって,なぜ連合国兵士の悪行を糾弾しないのか疑問疑問)
図書館関係のことは断片的にしか書いてないけど,わちきには仮性図書館本なのだ。