書物蔵

古本オモシロガリズム

 とある図書館で 書き込み本

ある図書館に移動し,書庫を見学。すばらすぃ〜。某大学の旧・図書館書庫を思い出した。古本の山でした。戦前の読書空間が再現できるよ。
特にオモシロかったのは,書き込み・切り取りのあった大学評判記。日本大学の学生がかきこみはじめて,「ポン大」の良さについて,つぎつぎと書き込みで論争が展開。おかしい。
でも,大学の良さが「高文」試験(高級公務員の試験)の合格率の話になってたのは,やっぱり戦前の大学生はまじめだったのかねぇ。
書き込みといえば,奇書を思い出した。
図書館で考える道徳 : 書き込み被害をめぐって / 諸橋孝一. -- 鳥影社, 2001.10
この本は奇書です。図書館本で奇書はめずらかなり〜。まだ売ってる(はずだ)から書店へ急げ!!!
なぜに奇書か。書き手が図書館人でないから。街のおじさんが,道徳的立場から,図書館所蔵本の書き込みについて怒り,研究している本なのだ。
この道徳的な研究ってのが奇書たるゆえん。本の毀損・亡失には十数年まえから興味があるけど,道徳的観点ってのは思いつかなかった。新聞投書なんかで慨嘆するってーのは,ありがちだけど,それを1冊の本にまでしあげてしまうとは……(誉めてるんですよ………きっと)。
この本,でた当初は知らなくて,ある先生におしえてもらってほんとうにビックリ。本のデキはいまいち。思考のつめが足りないし,編集もたりず,やや読みづらい。ただ道徳的観点ってのがスゴイ!
研究手段は本格的。わざわざ国会図書館の図書館研究所(の閲覧室)に通ってる。あそこは廃止になりましたが,一般市民が研究に用いたというのは,50年にわたる歴史のなかでも,あとにもさきにもこれ一回こっきりでは。
図書館雑誌には書評,でなかったけど(ホントは出すべきだと思う),いま記事索引をひいてみたら,『文学界』に書評が…。評者は著者を今和次郎考現学)になぞらえてる……。いやはや,「奇書」度はいや増しにましました。
すごいよ,平成の今和次郎だよ…