書物蔵

古本オモシロガリズムーー古本マニアの日々是趣味の人

文献レビューは大事だよ〜(*´▽`):00年代の日本近代出版史学

こんなんよんだ。

  • 掛野剛史「00年代の近代出版史研究」『出版研究』(43) p.3-23(2013.3?)

いやぁこれは勉強になる。結構、知らなかった文献があるよ(*´д`)ノ
これからのお勉強のためにメモせむ。

ご注意!

基本、読む価値のある文献は、上記、文献レビューに挙げとられるんで、これから言及するものは、その殆どが、挙げられていないが、わちきが気になったもの。あるいは、参考までに挙げるものでござる。マジメに研究する人は原文を参照せられたし〜(´∀` )

内容はこんな感じ。

項目立て 内容(わちきの解釈)
1 はじめに 関連レビュー紹介
2 出版社や雑誌、出版人などの送り手について 団体・人物中心研究:社史、伝記
3 雑誌・新聞など具体的なメディアについて 特定タイトル研究、類型論の萌芽
4 著者と出版社の関係について 出版契約史、著作権成立史
5 流通・書店・読者などの受け手について 流通史(取次・書店)、受容史(読者・読む場)
6 印刷・製本・装ていなどの技術について 造本史
7 著作権・検閲などの法制度と出版について 出版法制史
8 目録・復刻資料について ツール:参考図書、資料集(史料)
9 デジタル化の問題について 同上のdigital化
10 おわりに 外地、日本研究、クリアリングハウスの要

項目だて

本来なら各主題に配分されるべき外地の流通(→5の取次)、日本研究用蔵書(→5の読む場)を取り上げるのはすごくいいのだけれど、5のほうでも言及しておいてもよいのだろうし、いっそのこと、項目を「10 外地・西欧における日本書」とでもして立項してしまったほうがよかったかも。
4の出版契約史と7の一部は再統合できるかなぁ。7と8は統合して論じたほうがよいような気がする。3に這入っとる帝都日日の野依伝も、正しく野依自身がメディア(思想・主張内容でなくスタイルやフォーム、つまり形式)的存在として重要と指摘されとるのであれバ、まさしく特定タイトル「帝都日日」「実業之世界」でなく、2の人物伝のほうで論じるほうがわかりやすいのでは。

時代区分、採録範囲

明治から1945年あたりまでの事象の研究で、2000年代と2010年代でも気づいたものは入れてあるやうである。新しいものもできるだけ入れるのには賛成ぢゃ(*´д`)ノ 1945以降は、たとえば同じ号の「雑誌研究」のレビューとかに這入るのかしらん(゜〜゜ )

1の関連レビュー紹介では、

  • 時野谷ゆり「検閲(研究動向)」『昭和文学研究』64 p.156-159, 2012-03-00

に言及してもよかったかと。ただ、こっちのレビューは、字数制限のせいか全面書誌だらけで、十分展望されていなかったような憶えがあるが。

2の社史・伝記は、

おもしろいことが指摘されとって、この時期に出た多くが、すでにある大出版社の社史の続編とのこと。なるへそってか、そういふものは新味はないのが普通だわな。むしろ、

が出たのが新味なわけだけれど、出版社(メーカー)や取次(問屋)でなく書店(小売業)、それも、二次流通(古本)の店の社史は、実はけっこう珍しいという指摘があっても良かったかも。もちろん探せばいろいろあって、これは8の参考図書に入れて良いと思うんだけど、

  • 「古本屋の書いた本」展目録 / 中野照司企画編集. -- 東京 : 東京都古書籍商業協同組合, 2005.4. -- 52p ; 26cm

というのが出ていて(全国の公共・大学図書館にない。国会図書館にも無いけど)、実はこれが古書店についての書目ともなるということは、いちど話したかしら。索引がないから引けなくて困るものなんだけれど。
また、これは時期的に間に合わなかったのはやむを得ないけれど、このレビューは2010年代も拾えるものは拾っていて、そうすると伝記がらみで、

がごく最近出てをって、有名な鈴木徹造の人物事典を取り込んだうえで、オモシロ人物を加えているのが
カンドーもの。だって、あの松岡虎王麿アナキズム運動サロンだった書店「南天堂」経営者)があるのよ(σ・∀・)σ まあこれは8の参考図書でもある。

3の特定タイトル研究では

ブルドーザーのような佐藤卓己先生の特定タイトル研究はもちろんのこと、ここで最重要なのは、レビュワーもあげとる

  • 大澤聡「「雑誌」という研究領域」『昭和文学研究』60, 129-131, 2010-03-00(→吉田則昭, 岡田章子編『雑誌メディアの文化史 : 変貌する戦後パラダイム』(森話社 2012.9)に再録)

で。
つまり、特定タイトル研究の限界論、といふか、量の増大を質の向上へ転化できないかといふ疑問。
特定タイトル研究がどんどん増えるが、それがきちんとつみあがるには、それ相応の知的枠組みが必要でせう(だからこれからつくろうよね)という指摘。たとえば柴野『書棚と平台』があれほどまでに受けたのは、個別社史(出版社史、取次史、書店史)は山と積みあがってきたのに、それを横断的に説明する枠組みを持ち込む人がほとんどいなかった点にあると。柴野先生のバヤイ、アソートメントなる概念で流通、小売を説明していこうといた点にあるのでせう(とM氏がいってたやうな)。その伝でいふと、雑誌研究でいへばフォームないしフォーマットといった形式論を持ち込むと当座はよろしいと思う。たとえば雑誌にかぎらず、出版物全体の類型論があってよいし(かなり特殊な観点、つまり検閲事務からの出版物類型論が論が粗いが、

  • 林昌樹「戦前期全出版物の形態別分類表(試案)」『文献継承』19 2-6 (2011年10月)

がある。雑誌のなかでもジャンルの成立史なんかもオモシロかろ。もちろん雑誌の上位、ないし外部のフォーマットだけでなく、内部のフォーム、つまり編集形式論などもまだまだほとんど手をつけられておらず、たとえば、雑誌の「法定文字」とかもまともな解説がないような。記事ジャンル論なども必要。
特定タイトルの集積という点では雑誌にかぎらず「エロ本」も重要で。

これを近代日本出版史で逸することはできないかと(σ^〜^)

  • 別冊太陽. 発禁本. -- 平凡社, 1999-2002. -- 1 (1999.7)-3 (2002.2). -- 城市郎コレクション. 1 (1999.7), 地下本の世界. 2 (2001.6), 主義・趣味・宗教. 3 (2002.2)

こちらも。特に3の「主義・趣味・宗教」には3巻をまたがる総索引がついていて、レファレンス・ツールとしても使える。

が事実上の4巻目というのが、OPACなどからわからないのハ、もう、しょーがないね┐( ̄ヘ ̄)┌

4の著作権成立史んとこでは、

7でだされとる甘露純規氏の『剽窃文学史―オリジナリティの近代』(森話社2011)に言及する際、模倣こそ正しいという前近代的価値について、こっちのほうで言及してもよかったのでは。著作権なるものが、近代に創られたものであり、それが一概に正しいわけではないことを甘露著はオモシロな事件を通して見せてくれたのがいいところだったように、わちきには思われる。サブタイトル(これはレビューで紙巾の都合からか省略されとるが)「オリジナリティの近代」といふのは、そこいらへんを言い表したかったように思ふ。ってか、わちきだったら、もっと直截に「オリジナリティーという近代的価値:盗作と模倣の間」ぐらいにしたいが。盗作といえば、

もこの時期でて、評判をとったが、これは学術書でなかったからか、文学史とみなされたのか、言及されとらんね。

5 流通史で

『書棚と平台』が出るのは当然として、この本の巻末の解題書誌が実は出版史研究ツールとして重要であると8あたりで言及してほしかった。ん?(・ω・。) よく考えたら『古書肆100年』はこっちで紹介してもいいかも。

6 の造本、デザインでは

活字ないしフォントにもっと言及してよかったような。森さんがいつも高くて買えないとなげいとる活字調査報告書や、金田一こうすけシリーズの映画題字につかわれた写植フォントの本とかって言及されとるっけ(。´・ω・)? でも映画題字は出版物ぢゃあないか(;・∀・)ハッ?

なんかも、学術書ではないから、理路整然とといふわけにはいかんかったが、本の物としての側面から迫ったオモシロな本であった。あ、でもこれも戦後かぁ(*´д`)ノ
ただ昭和30年代ぐらいまでは、社会状況が戦前的だったしGHQによる検閲もあったことだし、「近代日本」の枠組みでやってしまったほうが、研究の方法論上も得かもしれぬ(゜〜゜ )

ってクレームがきたので。。。

森さんが、もう持ってるよ、とクレーム

あと、府川みつおさんの

が超重要と。

追記

7 出版法制のとこは

アメリカにあるよあるよ」と半ば伝説的に語られていた

  • 風俗壊乱 : 明治国家と文芸の検閲 / ジェイ・ルービン著 ; 今井泰子 [ほか] 訳. -- 世織書房, 2011.4

を入れといてもよかったかも。まあ2010年代だけども。ちょっと文学史すぎるとは思うが。

8,9 の資料論についてだけど、

やっぱりゆまに書房の「書誌書目シリーズ」と金沢文圃閣の「文圃文献類従シリーズ」ですなぁ(*´д`)ノ 書誌書目シリーズの開発者はもうゆまににおられないとて、文圃閣のほうに企画力があるように見受けられるのは、こりゃ身びいきのなせるわざか(^-^;) さういや不二出版も、

  • 臺灣出版警察報. -- 不二出版 2001.2 復刻版. -- 6號 (昭5.1)-35號 (昭7.6)

を出していた。一度読みたいなぁ。そうそう、台湾ときたら朝鮮。

  • 朝鮮出版警察月報. -- 韓國教會史文獻研究院 2007.10 [影印版]. -- 1號 (昭3.9)-123號 (昭13.12)

これも2000年代だったね。ただこれもいま見たら同志社とニチブンケンにしかなくて関東で見られないといのも困りもの(´・ω・`)
資料のデジタル化では、朝鮮(韓国)と台湾でどんどん当時の文献のデジデジ化がすすんでをって、それをきちんと(日本から使えるように)紹介してくれる国内言説がないのが困るんよ。
資料の使い方、ちゅーか、史料操作についても、いろいろ議論、つまり方法論があってしかるべきなんだけど、ほとんどないね。ってか、わちきが上記、大澤「雑誌研究…」をとても評価するのはその不在を指摘しているから。以前、拙ブログで

を上下にわけてUPしたけど、佐藤先生はまさしく支那目録学でいふ「輯逸」なる手法を近代文献に用いて、内地の「出版警察報」を史料として利用しとる。ところが、佐藤先生ご自身は、べつに方法を意識もせず自然にやっとるだけで、やれ「支那目録学ぢゃ!」とか「輯逸ぢゃ」とか「方法論ぢゃ」とかいふのは森先生とかぐらいである。しかして、意識化し方法として論じられ手法として命名されねば、いつまでたっても、佐藤先生の個人技でおはってしまふ。
出版史研究が固有の領域として成立するならば、固有の研究対象だけではだめで、固有の方法論があるはずなのである!`・ω・´)oシャキーン
ん?(・ω・。)
そんなにアツくなるなってか(;´▽`A``
まあ、資料論は方法論に通ずといふことで許されヨ(*´д`)ノ

おなじく8,9のツール論

布川先生も草葉の陰でお喜び!(≧∇≦)ノ

意外と知られとらんけど、レビュワーの指摘セル、

  • デジタル版日本出版百年史年表

http://www.shuppan-nenpyo.jp/
の「リニューアル」(2012.6.20)は、日本近代出版史研究における大大ニュースだったといってよい( ・`ω・´)b
わちきなぞ一般に電子化年表は好きくないのぢゃが、このデジタル版、すごく使い勝手がよい。そして項目の文字列がきちんと検索できる、という機能がついたことで、紙版でなかった機能、つまり主題を検索できる本来のデータベースになったといふところが特にスバラシイヾ(*´∀`*)ノ゛キャッキャ
出版人名(たまに生没年月日もあり)、雑誌名、出版法制なんでもありぢゃ!(って、ほんとうになんでもではありません。冊子版にあったものだけでござる。それでもすごいが)
レビュワーの言及がない、類似のこちらは、

正直いってイマイチぢゃった。まあ簡便ではあろうけど、採録基準のわからん単行書の書誌情報が必要以上に多く、学習にはともかく研究にはイマイチ(´・ω・`)

拝啓、マッカーサー元帥様

レファ・ツールの電子化では、アメリカ様が「日本人民にはかやうなものが必要だべ〜」と勧告しておいてくれた、「ホーサク」、日本法令索引が、気づいたら独自の進化を遂げていて、びっくり(@_@;)

たとえば、いまはない新聞紙法の本文が、ネット上からタダで見られる!
http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/viewEnkaku.do?i=1qIDAiR%2bxzlHJoVf5h9vvQ%3d%3d
まえの法にあたる新聞紙条例などへもとべる。最初のとっかかり、つまり、雑誌の発行には新聞紙法が適用されるんよ、ちゅーこと(「法の検認」)を予め別の本とかで知っとかないとリファーでけんけど、それでも微細な法改正もふくめてタダで見られるようになったとはとは。ってかこれも、わりと最近の話ぢゃあなかったっけか。

(戦前)新聞記事DB

百科事典、一般年表のかはりに機能する新聞DBだけど、p.22に毎日新聞のマイサク(毎索)とあるが、あれって、戦前分の記事はインデックスが付与されとらんから、見られるけど、まだ引けないよ(´・ω・`)
そこいらへんのことを数年前、みなとみらいなる図書館総合展で、上品なコンパニオンのオネーサンにしつっこく、ねほりはほり聞いていた人(だれでせう(σ^〜^)σ)をわちきは目の前で見ながら、

ひけなきゃ、縮刷版とあまりかわらんのだよなぁ(´・ω・`)

と思っていたことでした。
さらに、この8のツールで言及されとる

  • 『雑誌新聞発行部数事典 : 昭和戦前期 : 附. 発禁本部数総覧 / 小林昌樹編. -- 金沢文圃閣, 2011.12

も、サブタイトルが罪作りなもの。実際、レビューで、発禁号、発禁図書の発行部数がわかる便覧だとの紹介がなされているが、それは情報源を利用した売らんかなの付けたりタイトルにミスリードされちゃいまいかの(´・ω・`) 図書(つまり単行本)と異なり、雑誌新聞の発禁号は、ほとんどの場合、出版社の想定外で発禁になるものだから、フツーに発行部数の数値サンプルとして使える。3あたりの雑誌一般論にもってったほうがよろしかろ。

10にはいってる地域的偏差を

体現する研究はレビュワーが挙げているものの他に、取り上げてもよいものがいつかあろう。
まず、「近代日本」の内側の偏差として、大阪、北海道などがあろう。

  • 北海道の出版文化史 : 幕末から昭和まで / 北海道の出版文化史編集委員会編. -- 北海道出版企画センター 2008.11

これは戦後になっちまふが、終戦直後、札幌に出版社が東京から移転していたといふのは意外な話でこの本を立ち読みするまで知らんかった(。・_・。)ノ 樺太からのパルプが北海道に滞留していたことなどが原因である。
近代大阪、大大坂も見逃せませんな。

  • 近代大阪の出版 / 吉川登編. -- 創元社 2010.2. -- 内容細目:江戸時代の大坂出版界 / 羽生紀子 著. 明治期大阪の出版と新聞 / 平野翠 著. 青木嵩山堂の出版活動 / 青木育志 著. 大阪出版文化と金尾文淵堂 / 石田あゆう 著. 明治末〜大正期大阪講談本の世界 / 旭堂南陵 著. 大正期大阪の「出版文化展」 / 吉川登 著. プラトン社の興亡 / 小野高裕 著. 創元社の出版活動 / 大谷晃一 著. 近代大阪における漫画出版 / 増田のぞみ 著.

これは論文集なれど、きちんと一通り題材がそろっているね。
大阪といへばこんな本もあったね。

  • 書影でたどる関西の出版100 : 明治・大正・昭和の珍本稀書 / 林哲夫編著. -- 創元社 2010.10

基本は趣味なれど、かへって8の造本、デザインを見るには格好かもしれぬ(゜〜゜ )
さういや展覧会図録でこんなんもあったね。戦後をメインにしてたかしら。

  • 「本」を創る : フクオカ出版物語 福岡市文学館企画展2003 / 福岡市総合図書館文学・文書課編. -- 福岡市総合図書館文学・文書課 2003.7

あれ、これってどこいっちゃったかなぁ。。
ほんとは京都、名古屋あたりもあってほしい。

10のほんとのおわりにある、

史料発見のクリアリングハウス、研究成果の共有プラットホームの必要は。
これはもう、全面的に賛同しちゃふo(^-^)o
ってか、レビュワー指摘のとほり、1990年代、それを果たしていたのが、日本エディタースクールがボランティアベースで出版してくれていた『日本出版史料』てふ雑誌だったわけで。

『文献継承』だけではさみちい、出版史・図書館史研究の研究同人誌をバ、やらぬか(σ・∀・)

と、いろいろ言ったのだが、「研究同人誌がはやったのは1980年代ですよ」などというお答えがあるばかりなり(´・ω・`)

さいごに

と学問的には正しいやりとりをM氏としていたら、それを聞いてた某氏が

ご自分で、おやりになれば(  ̄▽ ̄)b

と( ・ o ・ ;)
どうやら、似たようなことをしたことがあるらしく、言ふは易し、といったことをわちきに言ひたかったらしい(*´д`)ノ
いやサ、じつは言ふのも結構むづいのでは(。・_・。)ノ 言ふとしたら、「かうでせう、あゝでせう」といふことを喋喋してをったのぢゃ(σ・∀・)σ
学術維新ぢゃ

目を通そうと思ったもの(かきかけ

『昭和文学研究』 2006 52 特集 出版文化と昭和 1-48

おまけ 2000→2013前半の関係書一覧

つくりかた:Ciniibooksで、分類:02*、件名:歴史、年代:2000→2013、本文:日本語で網羅的リストをつくり、そこから主題が外国や前近代、戦後のものを目視で除いた。掛野レビューにあるものもあり。

00年代日本近代出版史単行本一覧(年代順)