書物蔵

古本オモシロガリズム

図録が安くて良いのにはワケが(続)

さるブログ主から、安価なのは公立館の価格政策(利益をださない)に私立もひっぱられとるから、という証言をご教授いただく一方、
畏友より、「権料免除→安価」説も新聞でみたことある、とおしへられ、ちょっくらしらべようかと…
そしたら、「展覧会とカタログ」ってな項目が、専門書誌に立項されとりやした。や、これは便利だ。
美学・美術史研究文献要覧. 2000-2004 / 星山晋也[他]. -- 日外アソシエーツ, 2005.11
いつもビミョーにほめつ、けなしつしてしまう日外の、これはありがたい専門書誌。水色の装丁が目印ね(o^ー')b おもに人文系を中心にいろんな分野ででてて、調べたいジャンルがあるのなら、これにあたるといい。期間を10年ぐらいでくぎって継続出版されとるし。一時期は、『20世紀文献要覧大系』ってシリーズ名で出てたから、どんなジャンルがあるのかはこのシリーズ名でOPACをひくといいかも。古いもん、あたらしいもんはシリーズ名ははずれとりやす。でもなぜだか装丁は水色。
で、この項目「展覧会とカタログ」の下にならべられた文献リストをちらっと見て…

(雑誌記事にこまめにあたるのは)めんどくせぇなぁ

と、しらべものをする人にはあるまじき感想をいだきつついると。
('0'*)あっ! こんなところにあったよ。
展覧会カタログの愉しみ / 今橋映子. -- 東京大学出版会, 2003.6
これ、これ(^-^*) ちょっとまえ古書店で安く拾ったんだった。
専門書誌から個別に論文記事にあたるよりも、まともな単行本を1冊みつけるほうがよっぽど効率がいいのだ、調べものってーのは。
もちろん、そんな単行本がなければ(古すぎるとか書誌がないとか)、専門書誌やら一般書誌(雑索とか)をつかって地道にやるしかないんだけどね。
ぱらぱらめくると。
のっけからきちんといろいろ書いてある。

言説空間に根強い、「権料免除→安価」説

この本は今橋さんを代表とする展覧会図録論と、いろんな人による個々の図録の書評とからなる。
その今橋さんの記述に

お得な面の第一は、やはり値段でしょう。すでに説明したような著作権上「小冊子」の性格から、しばしば著作権料を免除されているため、オールカラーでも驚くほど安い値段で私達に提供されています。もちろん大型画集のような臨場感は味わえませんが(後略)(p.7)

とある。
ただ今橋さんも、美術館の現場の人じゃなくて文化研究者であり、ISBNの有無を流通の可否に直結しているという誤解*1などをなすっているので、かならずしも現場の全体像を反映している話かどうかはわからず。
ただ、研究者も「権料免除→安価」説にのっているということは、実態はともかく、この説はかなり流布しとると見た。
ホントーは、図書館学における「灰色文献」論の一環として、アート・ドキュメンテーション論の人々が研究すべきなんだろう。

最近では、少しずつ一般書籍としてつくられるカタログも出てきましたので、今後はこの傾向も見守る必要があるでしょう。(p.4)

と今橋さんも言っているんで、この本がでた2003年以降に急速に状況がかわったのかもかも?

ネット上に関連文献リストが('0'*)

ところで、それこそ今橋さんが指摘しとるが、アート・ドキュメンテーションという図書館情報学のsub-disciplineがあるので、この件についてもそこの文献を参照すべきではある。
しかしたいていのことには先行文献があるもんだねぇ(・∀・`;)
ネットに専門書誌があるので、まじめにやるにはそれを参照すべし。

アート・ドキュメンテーション関係文献目録(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jads/

「G-2_展覧会カタログ」って項目がそれ。

*1:むしろ取り次ぎとの口座開設の問題では