新幹線の中で,イノショーの本を読了す。
夢と魅惑の全体主義 / 井上章一著. -- 文藝春秋, 2006. -- (文春新書 ; 526)
東京駅で買ったもの。
帝冠様式(当時でいう日本趣味)が軍国主義と無関係であったことを,満洲国の(擬似)帝冠様式をもひっぱってきて論証するもの。帝冠様式ってのは,そう「軍人会館(現・九段会館)」のようにビルヂングのうえに瓦屋根をのっける様式。
川村湊と論争になってたとは知らなんだ。
また,老大家が若手を古い規範で圧迫したにすぎない(と井上が考える)ことを「ファシズム」という建築史家(八束はじめ)をとらえて,
〔そんなことは〕いつでもどこでにでもある。(略)商品開発の企画会議などは,どこの会社でもそんなことの連続で(略)。
これを「ファシズム」だと言いだせば,世間は「ファシズム」だらけになる。(略)第一次大戦後の大衆社会に発生し,第二次大戦をひきおこした,そんなファシズムの,歴史的な固有性が,見えなくなる。
と批判している。
井上はそもそも独伊ソと異なり,「日本ファシズム」は明るいユートピアを示さなかった(少なくとも建築では)という点で,ファシズムではなかったのではないかといっている。ただの貧相な軍国主義,「戦時体制」にすぎなかったと。