書物蔵

古本オモシロガリズム

日本レファレンス史のミッシングリンク(続)

このまえの書きかけのつづき

志智の神戸市立,レファレンスに邁進す(1950s)

で,伊藤氏は志智のもとでどんなレファレンスサービスが展開されたかを,極く簡単に述べている。(くわしくは,薬袋先生の論文をごらんくださいまし)

  • 「クイック・レファレンス(ささいな質問)」を重視
  • 電話レファレンスを重視(キャッチフレーズ「ダイヤルの中の図書館」)
  • ビジネス支援を重視 
  • 「レファレンス・ツール」を自館で開発(「中小企業案内索引」など)
  • 「参考事務分科会」の設置(昭33)

あれま('0'*),こりゃ今の話でも通じるよ。通信回線をつうじてレファレンスをするってのは,インターネットのレファレンスにも通じるし。志智の「古今東西,森羅万象」ってのは知ってたけど,「ダイヤルの中の図書館」ってのはしらなんだ。まことにリモート・サービス(遠隔奉仕)の本朝における濫觴といへり。

あしぶみあしぶみ

で,上記の話はみーんな今の話としても通用するといったよね。これはどーゆーことか。
もちろん,志智レファレンス実践の先見性を物語るという意味もあるけれど… それだけじゃない。
よーく考えてみて。志智の1950年代の実践と2000年代の現実が(テクノロジーのちがいはおいといて)そう違わないということは…
そう! レファレンスはここ半世紀も,コンセプトレベルでは進歩しなかったのだ!
それだけじゃない。志智のコンセプトが今,目新しく感じられているという現実は,志智と今とのあいだには空白があるということなのだ。レファレンスは志智のあと,「進歩しなかった」のではない! むしろ積極的に「衰退した」のだ!!!(コンセプト的にも実践上も)
こりゃー業界的,学問的なスキャンダルだよ
(つづく)