書物蔵

古本オモシロガリズム

年鑑とは何か:先行文献の読解から

http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20110627/p1
のつづきね
年鑑についての本というのは、森さんも指摘せるように、代表は『日本年鑑総覧』(1987)である。がしかし、森さんのいうように、この本、概念規定をせずに、川上和秀という書誌研究会のメンバーが「「年鑑」または「アニュアル」と題される刊行物」を集めたので、いまいち概念整理に使えない。排列も本文を分類順にすべきなのに、タイトル五十音にしちまって…。網羅性はそこそこあるのに、なんだか仕上げがいまいちなレファ本なんだよなぁ。特に年鑑の歴史的経緯がさっぱりわからん。

今の定義に実態が定着したのは昭和初期か

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日本における「年鑑」成立の歴史

皓星社の雑索などを使っていくつか文献を見てみたんだけど、別途調べていた「出版年鑑」についてのものが意外にもいちばん役立った。

  • 出版年鑑の刊行/赤堀又次郎 図書月報 27(8) 昭和4.8 p.171-174

〔組合版〕出版年鑑の初版が、近く七月に発行せられた。(略)一ヶ年間の仕事の有様を締上げて年鑑など云ふ形式にまとめて発表する事は、古く政府の政表*1にあった。政表は今の統計の事。

と、昭和初年の年鑑を「形式」としてとらえ、起源を明治初年の統計書に置いている。

*1:ニッコクに「政表書」立項。米欧回覧実記(1887)の用例あり。

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赤堀又次郎 1866-1943?について

記事に感心したので、チト調べてみた。著書がたくさんのわりには、情報が少ない。『文芸年鑑』の名簿が昭和10年版から文芸家から文筆家に拡大され、そのおかげで赤堀は昭和12年版から出てくる。

赤堀 又次郎 牛込区加賀町二ノ二
慶二生、愛知県 明二一東大、国史、元東大講師。「文芸者年表」

とある(p.270)。
昭和15年版から住所が、「牛込区早稲田南町四」に移っており、昭和18年版にも載っている。少なくとも昭和17年まで生きていたと考えてよいだろう。没年は不明だが、higotosukeさんの引用から、未亡人が反町に本を売りに着ているので、昭和18年から昭和20年5月(山の手が空襲にあう)の間であろう。http://d.hatena.ne.jp/higonosuke/20060615
昭和18年用の学士会『会員氏名録』も見てみたが、本文(昭18.3現在)にも物故会員一覧(S16.11-S18))にもなし。もとから学士会員ではなかったよう。『日本古書通信総目次』の物故者一覧にもなし。
また、『現代出版文化人総覧 昭和18年版』には、名前にふりがながあり、「アカホリ マタジロウ」と読める。アカボリでなくアカホリなのかなぁ?