書物蔵

古本オモシロガリズム

『図書月報』に「秘密に押収」が出ちゃってる(σ^〜^)σ

古本整理してたらこんなんが出た。

  • 『図書月報』8(12)(明治43.9.23)

じつはこの、(明治43.9)といふのが超重要で。それでわちきも拾ったんぢゃらう―ってか全然覚えてない(^-^;)

◎押収の困難
社会の公安を妨ぐる虞ありとて、同時に七十余種の既往図書に対し、突然発売禁止を命じ、秘密に押収しつゝあるが、兎に角大多の種類なるを以て警察官の手も行届かず、かつ普通禁止の場合は発行所より販売店に送り出したる部数を一々調査せらるゝ例なれど、今回は数年前に出版されし図書もあれば、発行所、販売所、いずれも山積みしある筈なく、従って押収の手続きも非常に困難なりと。

大逆事件を受けての一斉発禁、とくに遡及的禁止(昭和期には「失期処分」と呼んだ)のことが、彙報欄につらつら書いてあるのぢゃが、その一つの項目。
いろいろ面白い。
・旧刊書、既刊本のことを「既往図書」と呼んでいる。
・「秘密に押収」とあるが、この業界誌にちゃんと載ってしまってゐる。
・点数の多さ(当時は「点」でなく「種類」を使っている)。
・「禁止の場合は発行所より販売店に送り出したる部数を一々調査せらるゝ例」が「普通」となっていたことがわかるなど。
これは百年史年表で、

1910/07出版関係
内務省,発売禁止書を《官報》に記載すると同時に各府県へ通牒して在庫品を押収した従来の方針を改め,一切告示せず,秘密裡に行うことにする.→9月.

やら

1910/09出版関係
いわゆる〈大逆事件〉(←参考欄6月1日)のため社会主義関係の図書に対する弾圧が急に厳しくなり,明治32年頃まで遡って発禁処分をなし,9月以降その数は70点に及ぶ.例えば,幸徳秋水《廿世紀之怪物・帝国主義》(34年,警醒社刊)・片山潜《我社会主義》(36年,労働新聞社社会主義図書部刊)・木下尚江《火の柱》(37年,平民社刊)・ブラッチフォド著・堺利彦訳《通俗社会主義》(38年,由分社刊)・山路愛山社会主義管見》(39年,金尾文淵堂刊)・堺利彦社会主義大意》(40年,由分社刊)・石川三四郎《虚無の霊光》(40年,世界婦人社刊)・白柳秀湖《鉄火石火》(41年,隆文館刊)・加藤咄堂《朝思暮想》(43年,東亜書房刊).など.

とされていることに対応する。