書物蔵

古本オモシロガリズム

出版史上の出版点数

しばらく前、目録で当たった雑誌の合冊をながめていたら、オモシロ記事が。

〔昭和〕十一年度新刊の諸統計
 毎日内務省の検閲机上に積まれる新刊納本の中から書店店頭に陳列されるものは幾可か、大取次の手を経て発売されるものは東京堂統計部の調査にようると十一年度は5003種、これを十年度の4821種に比べて182種の増加となつている、昭和五年依頼の統計によると
 五年 4136種
 六年 4084種
 七年 4385種
 八年 4728種
 九年 4573種
 十年 4821種
 十一年 5003種
となって居り、(以下略)
『出版通信』(316) p.6-7 (1937.1.24)

まず表記形式の点で、「、」が区切り記号として使われている。文と文の間にも「。」でなく「、」が使われ、改行の最後の文末には記号がなにもない。
内容でいうと。
内務省の納本統計には多量の非売品が含まれ、それを除外しないと、流通にとって意味ある数値にならないという判断が、前フリからわかる。
ここではそれを、内務省統計から生成するのでなく、大取次=流通の大部分という仮定・前提のうえに、東京堂の数値をとりあげている。
数値が昭和5年からあるのは、東京堂版出版年鑑が昭和5年から出ているので、それを参照したのであろう。
ここでは「種」=現行出版界の点、図書館界の「件」つまり1タイトルとなっている。