書物蔵

古本オモシロガリズム

日本における火災保険地図の歴史およびその研究の歴史(その2)

附3.この地図の種類名

じつは火保図、呼び方がいくつかある。とりあえずわちきは「火災保険地図」を推奨しておくが、ほかにも。
火災保険図、火災保険特殊地図、といったものがある。おそらく元は米国の、fire insurance map ; fire mapのマネから始まったものなので、火災保険地図がよいと思う。火災保険特殊地図というのは、沼尻長治による造語か、あるいは自社製品へのシリーズ名であるかもしれない(井沢1999)。現用時代には業界内で火災保険図という用語もあったが、これだとマップであることがあいまいになるので、現在の術語としては不適当であろう。
火保図(かほず)という略語は現にまあなんとよみつきで郷土担当司書が使っているので、実際にある言葉ではあるのだろうが、出所が不明。現用当時の保険業ジャーゴンか? 地図会社側か、あるいは1980年代に発明されたものか。いずれにせよ、現用当時の火災保険業文献をさらう必要があろう。 

附4.「これは本じゃない」???

ネットにあるとおしへられたこれを読んでみた。
伊東理「虫ぼし抄 サンボーンの都市の『火災保険地図』」(『関西大学図書館フォーラム』 (11) 2006 pp.30-34)は、http://web.lib.kansai-u.ac.jp/library/about/lib_pub/forum /2006_vol11/2006_07.pdf
その一節。

歴史的資料としての火災保険地図
 火災保険地図はそれが作成された個々の都市の「時の断面」cross sectionを示している貴重な地図として高く評価され、イギリスでは大英図書館The British Library の地図室で、合衆国では議会図書館The Library of Congress の地理・地図部門で、系統的に収録・保管されている。
そのほか地方の図書館や大学図書館などで、地元の都市の火災保険地図が当該都市の発展過程などを知る貴重な資料として位置づけられ、大切に保管されていることも少なくない。

これを読んで言葉を失ったよ。
国会には都市星図、じゃなかった製図じゃない整図社のコピー本火保図すら所蔵がないとHPにある。まじめクラークが「これは本じゃない」と言ったんだろうか。国会への納本で「取次→自動納本」は行政の効率化という点で偉大な発明だったわけだが、結果、「集める」センスが蒸発するという副作用をまねいてるのでは(-∀-;) 青木実さんらが1970年代に中小出版を組織化したのが収集部の最後の華?
年表みてもわかるように、火保図を発掘した千代田は1990sにまるでダメ状態におちこんでしまったし(その結果として指定管理者経営による大成功がある)、やっぱり日本の図書館は直営ではダメなのかなぁ…
さみしい…