書物蔵

古本オモシロガリズム

(言説空間の)影を引く 索引としての ウィキペディア

ネットは独りよがりや妄想の渦である。ウィキペも同様である。まちがいだらけである。とゆーのは全面的に認めちゃう(・∀・)
なれど…
なれど、使わないテはない。といふか、もともとそんなもんなんだから、そのよーなものとして使うがよろし。
ウィキペのアホさかげんについて分かったうえで使うのがベストかと。
友人からこんななげきが。

日本版ウィキペディアの「聖像破壊運動」を見ると,ビザンティン帝国でのイコノクラスムだけが記述されていて,宗教改革のときの聖像破壊については言及されていないのに,写真は英語版と同じくプロテスタントに襲撃されたオランダのユトレヒト(8世紀には存在しない…)にある教会の写真が使われています…
この手の間違いばかりです。

それにこんなふーに答へた。

そうですね。
だからこそ、わたしは(日本語版)ウィキペの長短について論じるべきだと思うのです。
逆に言えば、
・和洋であれば和ものは相対的に正しい
 さらに逆に言えば、英米なら英語版を、古典古代(classical antiquity)については独語か伊語を、などという使い方
サブカルvs.メインカルチャーなら、サブカルは相対的に正しい
 とくに、アニメ・マンガ・テレビなど、どーでもいいことについては他で得られない情報が入手できる
ネット情報が、ヤフーなど分類(概念索引法)型しかなかった頃、あるいは引用分析を欠いた語句索引(おバカ自動索引法)しかなかった頃は使えるものではありませんでしたが、グーグルで実用性がたかまってからは、現実世界の影と、言説空間の影をひく「索引」として使うのがよいのではないか、と思っております。
もちろん、我々は現実世界に住んでいるのですし、それなり(にまとも)な言説は、結局のところ「紙」の世界を発信源にするしかないとも思っていますが。

もちろん、コンテンツについて責任をもたないウィキペであってみれば、むかしの紙の百科事典のように、すべての項目について(相対的に)均一な信頼性がある、というわけにはいかない。
項目の属性(日本ネタか海外ネタか、メインかサブカルか)によって信頼性や正確性はおおきく異なってくるし、もっとはっきりいうと、パラグラフ単位、文章単位で懐疑しなければ使えないわけである(これは日本語版に限らないが)。

それを前提とした使い方:「レファレンス事典」としてウィキペを

ってか、日外アソシエーツがさかんに出してをる「レファレンス事典」ってしっとるかい(σ・∀・)σ
英語でレファレンスってーのは、参照すること、のほかにもいくつか意味があって、参照指示をする項目そのもののこともいうのだ。
いろんな資料や事典の、項目だけを集めてきて、一度に横断的に引けるようにした本が「項目横断検索事典」すなわち、「レファレンス事典」なわけである。
便利。
ウィキペも、そのように使えばよい。
記述は参考程度にしておいて、その元にとんでくためのインデックスとして使えばよい。
たとえば…

ふぐるま

図書館家具に「ブック・トラック」というものがあるが、なんと日本では古代から使っていた、といへば、欧米図書館員をおどろかすことができるわけで…

平安時代ブックモビル?:Kleine Bücherwagensgeschichte in Japan
http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20090831/p1

この前上記エントリでしらべたら、紙のレファ本では、いまいち「これは」といふ文献をひっぱりだせなかったのだが、なーんと、ウィキペの項目にあった書誌で近年の研究をば、見つけることができた。

文車
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E8%BB%8A

下記へ参照があった。

松薗斉「文車考」『院政期文化論集 5』院政期文化研究会編 森話社 2005
『王朝日記論』松薗斉 法政大学出版局 2006 第三章 p53-76

これは、ウィキペが日本史文献目録として機能した例。

ニキウーのヨハネ

むかし興味があったフォーカス帝の項目を引いたら、(http://en.wikipedia.org/wiki/Phocas)レファレンスがついていて、なんとまあ、ニキウーのジョン(ヨハネス)の年代記がリプリントされとるという(http://www.evolpub.com/CRE/CREseries.html#CRE4)のを見つけてびっくり。
だってこれ、1916年に英訳されたのが今でも現役の本として使える(だって、エチオピア語なんて、なかなか読めないから)のが、どこにもなかったんだもの。
ん、よく考えたら、フォーカス帝といふより、ヘーラクレイオース(ヘラクリウス)帝のほうに興味があったんだっけ(^-^;)