書物蔵

古本オモシロガリズム

マンガ研究図書館評論

まんがのアンソロ本として改題された『THE BEST MANGA 2010──このマンガを読め!』には、オモシロな対談がついていた。
そんなかにわりとめずらしいマンガ研究図書館についての話が載ってた。
まず、米沢記念図書館の収集状況について。雑誌や多巻物の欠号のことが話題になっている。

中野 私も行ったんですが、個人のコレクションって、ちゃんと集めると歯抜けが多いからあれだけを研究者が研究用の資料に使うのは難しいですね。
呉 「りぼん」なんかもポコポコって抜けてる。どうしても個人所蔵のものはそうなるね。
中野 巻数の多い単行本も途中で飽きたかして途中からないやつもいっぱいありました。
呉 貸本が意外と少なかったね。
中野 貸本はまだ箱が開いてないんです。ただ内記コレクションと比べるとちょっと……
呉 そりゃ全然違うよ。集めるモチベーションが違うから。内記さんは集めるべくして集めてたけど、米澤くんはやってるうちに集まってきたものだから、意味が違うよね。
中野 でもそれを図書館にしてみんなに使えっていうのはちょっと……。今後、大学がきちんとした方向づけをして集めていく必要があると思います。
呉 とはいえ、あれは明治大学がやる気になってるから、以後、司書たちがその歯抜けのものをネットで探すとか、神田で探してきて揃えると思うよ。
いしかわ 内記コレクションもいずれ入るんだよね。
中野 2014年に新しい図書館がオープンするときに、いまの米沢嘉博記念館をベースにして内記コレクションも入れてバージョンアップする予定です。建物は中学と高校の跡地に出来ます。
呉 かなりスペースが大きくなるから、閲覧室とかコピー室とかも出来るね。(p.444-)

個人のごく小規模なコレクションなら、むしろ欠号は発生しないし、埋められていくものなんだけれども、個人の中規模、大規模コレクションだと、なかなか管理しきれない。
いや、これは、とゆーよーな重要資料を古書目録から買う、といったことは小回りをきかせてできるんだけれど、ルーティン系の作業というものが個人だと「業務」として立ち上げることができない。
だから、欠号がいろいろあるようで、欠号が多いと、研究のためにササッと参照することができんことになるんだよねぇ。
まあもちろん、かつては、まともな司書なら、「歯抜けのものをネットで探すとか、神田で探してきて揃える」ようにしたもんなんだけど、いまの司書には古書の知識がないからなぁ(*゜-゜)
さすがわちきの尊敬する先生がたなので、いろいろオモシロいことを言っているのだが、わちきがマンガ図書館関係でイチバン知りたいことを論じてくれていたのがオモシロ。

マンガ研究図書館の両極体制

中野 明治がこうして作っちゃうと精華大(京都国際マンガミュージアム)が困りませんか。
呉 いや困んないよ、。やpっぱり地理的、ロケーションに違いがあるから。いまも東京の研究者がわざわざ精華のミュージアムにくることはないんだよ。
中野 そうなんですか。
呉 だって東京だったら内記さんの現代マンガ図書館があって、使い勝手は悪いけど国会図書館がある。だから関西系が、大阪の児童文学館と京都ミュージアムを使ってるわけ。だから今後のマンガ研究は、関西エリア関東エリアという二極で車の両輪のように並立していくと思うね。(p.451)

なるへそ。
やっぱり距離的に東西で分立しながら研究がすすんでいくのかもしれんですなぁ。ってかマンガコレクション(コンテンツ)がそこにあるからそうなるということなわけで。
ならば。
まだまだ国立国際関西マンガ図書館の成立する余地がありそうな感じである。
お台場に出来る予定だった文化庁附属国立マンガ喫茶はやっぱり箱がさきでコンテンツがあとだったから、支持がイマイチひろがらなかったのだと思う。この対談でも、

中野 八月でわざと入れなかったのが国立メディア芸術センター。
呉 あー、やめた話ね(笑)。(p.444)

という位置づけになってしまっている(。・_・。)ノ