書物蔵

古本オモシロガリズム

古い絵葉書と図書館史

友人におしへられ、超オモシロな英語論文を斜め読みしてみた(・∀・)
Lear, Bernadette A.
Wishing They Were There: Old Postcards and Library History
Libraries & the Cultural Record - Volume 43, Number 1, 2008, pp. 77-100
バーナディット・リア「そこにあったらいいのに:古い絵葉書と図書館史」とでも訳すのだろうか。
関連サイトもある。
http://sentra.ischool.utexas.edu/~lcr/archive/postcards1.php
むかし趣味で集めてた図書館の絵葉書がごっそり出てきて、図書館史研究に使えないだろうかと考察してみたというもの。
米国で絵葉書は19c後半にできたもんで、20c初頭に収集ブームがあったという。そして…

図書館史家にとって幸運なことは、絵葉書の黄金期(ca.1893-1918)と図書館の黄金期が重なったことだ。アンドリュー・カーネギーその他によるメセナで新しい図書館が国中に伸張していったが、同時にそれら図書館建築をフューチャーした何百種もの絵葉書が出現したのである。都に立つ巨大な新「議会図書館」から、メーン州の海岸にあったちっぽけな図書館にいたるまで、大小の図書館が絵葉書に現れた。

アメリカ図書館大会(1914)で配られたこともあったみたい。ただ、いまは絵葉書に図書館はあんま出てこないそうな。

活用の可能性

まぁフツーに、図書館の建築様式史につかえるだろうと。見ているだけで楽しいし。
あと平面図同様に、客の動線を推測できるものや、閲覧室の配置がわかるようなものもあるそうな。遠景から映したもんは、建設地の環境なんかも。
内部を映したものには、たとえばレファレンス・サービスの誕生をおもわせる巨大なカウンターとかがでてくることもある。

問題点

ってか、これが結構むずい問題なわけであるが(゜〜゜ )

何時の画像かがわからないことがほとんど

出版者や出版年が印字されとらん。これかなり致命的。ロゴなどからわかることもあるそうだけど。総覧して年代を間接的に推量することもできなくはないが、そのツールになるのが、古物商のトレード・リストみたいなもんしかないそうな。学術的研究ははじまったばかりとも。

あくまでアート

じつは、写真に映ったままが刷り込まれているわけでないのだ絵葉書は。
あったがまま、ではなく、こうあっって欲しいなぁというデザイナーの反映だったり。つまり、美術としては結構でも、歴史資料としては「改ざん」になるということ。

ほかにも

あと、新築時はわかっても、その後の変遷は絵葉書になりづらいし、分館も(分館そのものがまだあまりなかったとはいえ)出てこないそうな。
有名館は結構あっても、無名館の絵葉書はなかなか見つからないとも。
やっぱり史料として使うのはむずかしそう…