書物蔵

古本オモシロガリズム

地図出版史研究概観(・o・;)お堅いタイトルなり…

Hisakoさんのブログ記事、森鴎外著『東京方眼図』に思わずカキコしたのにつられて、こちらにもカキコ

地図出版史研究の4領域

日本の地図史研究をば、とりあえず4つのジャンルにわけて考えたい。

  前近代 近代
官撰 伊能図 地形図
私撰 切絵図 都市図

あわてていうと、わちきは地図を作るの(測量・製図)にはあまり興味なくて(これは科学史の文脈になる)、消費(流通・使用・収蔵)に偏ってこだわっているんで(地図書誌学???)。ここでも、出版とか収蔵とかの話を主にしていると思ってくれい。
地図ってのは実用品なので、古いもんはどんどこ捨てられ省みられることがない。
だから地図研究は。
いちどすっかり忘れられたあとで、
1)現物の蒐集(と、図書館等における地図現物の所蔵状況の確認)
2)地図の復刻(実用や趣味)
3)論文が書かれる
といったパターンですすむ。
とりあえず4つのジャンルにつき概観すると…

伊能図など

伊能図は戦前から研究がすすみ人気。原図が明治期に焼失したこともあって、謄写本が発見されるたびに新聞におおきくとりあげられる。国絵図とか日本図とかも、伝統的に人気で研究もかなりある。

切絵図など

江戸期のタウンマップたる切絵図については、地図そのものの復刻も早くからすすみ、研究がかなりすすんできたといえるのでは。『江戸の地図屋さん』俵元昭(吉川弘文館2003)とか、出版・販売史もでた。

地形図など

近代国家の証明、地形図(topographic map)
1980年代後半から柏書房(地図資料編纂会)が図書館向けに巨大な冊子じたての復刻をさかんに出し、この流れは、柏書房から独立した出版社・之潮(コレジオ)さんが継承。
現物の収蔵については、地理院、国会、東北大、岐阜県立あたりが最近ヤル気をみせているやう。ただ公開性(書誌の公開等)において国会、岐阜県立などに一日の長が。
日本史関係者ならかならず地形図かその復刻にお世話にならねばならぬところだが、なかなか活用しきれておらぬよう。
地形図の歴史は、『測量・地図百年史』(1970)がキホンで、どの文献もたいてい、これをネタ本にしている。一方で、雑誌『月刊古地図研究』(1970-1995)などに拠ったマニア、コレクターたちがよい研究をしている。その成果は、じつは柏書房の復刻地形図集についていた付録に集約されている(が、これがなかなか見られんのだなぁ。バラで買うこともできんし)。
最近は、陸地測量部など陸軍がもっていた地形図が敗戦でどのように散逸・継承されていったのかという研究が東北大あたりですすんでいるらしい。
マニアたちは、「こんなのがあったよ」というとこ(書誌同定)まではいくが、それが「どこで見られるの」っての(所蔵情報)は書いてくれないことが多い。あと、とりあえずおおざっぱな全体像を素人向けに書く、という動機にも欠ける。

都市地図(市街図)など

で、都市地図・市街図(town map)なんだけど。
これの発行主体は江戸切絵図の流れを汲んでか(未調査)、民間出版社の領分だったのだわさ。
上記、3ジャンルの研究はかなり進んでいるのに、この領域だけが足踏み状態。
で、ちょっと考えてみた(つづく)