書物蔵

古本オモシロガリズム

アマゾン古書拡大(再考)

以前、国会図書舘の全国書誌データをAmazonが買って、そこについてる分類標目や件名標目を活用できるようなインターフェイスを工夫すれば、古書業界にも学術にも役立つものが出来んじゃないのか、と考えたことがあったが。
実際に搭載されとるデータをみるかぎり、(例えばこれ→http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000JAQ3KM/sr=1-2/qid=1163217793/ref=sr_1_2/503-3046877-3619106?ie=UTF8&s=books
ほんとに最小限の記述しかないね。
で、これがうまくいくかどうか、2つの点でいささか疑問なのだ。

仕入れの供給源

セドラーはブコフで仕入れている。1980s以前の本は、ネット風聞によれば買い取らないか廃棄してるらしい。
ブコフが廃棄本の寄せ場をつくってセドラーに公開するとか、なんか斬新なことでもしないと新規の消費を支えるだけの供給がまかなえないのでは。

仕入れの方法(書誌の同定)

セドラーはケータイのテンキーからISBNを片手で打ち込み、書誌を同定したうえで仕入れの可否を決めている。著者名や書名で同定するにはケータイというツールに限界あり。ケータイを超える個人携帯端末は当分でてこないとすれば、方法論的にムリがある。
データの側には、Amazon番号?のASINが振られているけど、古書の現物にはそんなものは印字されてないわけで。
「書名よみの前方一致で一覧選択できるような画面」とか、「著者一覧で選択できるような画面」(まさしく著者典拠ファイル)とかがないとケータイでISBNのない本の書誌同定するのはムリでは。
〜〜
ただこんなことも考えられる

旧来の古書展にセドラーが殺到?!

いまでもほんのちょっとだけだけど、片手にケータイでピコピコやってるアンチャンがいる。
方法論的な解決があって(あるいはめんどくささにめげないようなセドラーがたくさんいれば)、従来の古書展にセドラーが殺到する可能性も、なくは、ない???

従来サイト(書誌入力方式)との棲み分け

書誌データが増えても、出品データをぶら下げられる親データの書誌がなければ出品できないという本質的限界がある。
もと司書の観点から言わせてもらえれば、従来の、古書店が入力する書誌データ群に規範性はもとから期待していないわけで。いろんなものがぐちゃぐちゃ入っているのだけど、じつはそれがまた良いのだ。
図書館ではもともと、「収集しない書誌つくらない保存しない」ような資料がポカっと出てくるとこがまた、古本のオモシロさ(であり、それこそ学術的にも役立つところ)。
それに同定という点でも、現物から直接入力すれば、他の本の書誌データにリンクしてしまう、という種類のマチガイは絶対にない。
既存のデータにリンクする際、ISBNみたいに一意に決まるようなものでないと、「判断」が必要になってくるわけだが、これがまた、なかなかにむずかしいわけで(それを専業にオマンマを喰ってる司書だってまちがう)。
「そんなことするぐらいなら現物を見ながら入力しちまったほうがラク」ということであれば、当面、従来の古書販売サイトの優位はゆらがない気がするのだ。

ともかく、古書収集マニアには目が離せない話ではある。