書物蔵

古本オモシロガリズム

エロ本の古典「ファンニイ・ヒル」の初訳、納本分の行方

http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20100204/1265209251

が、私はそこで、大部分の伏字又は削除なしには、到底公然と出版出来ないような好色本の翻訳もやった。ジョン・クレランドの「ファンニイ・ヒル」がそれで、その翻訳を引きうけるときには、しかし、私には私なりに、自分の後ろめたさをごまかす一つの「逃げ口上があったのだ。
 あまり有名でない或る出版社が、世界中の稀覯本といともいうべき好色本を叢書として翻訳出版する企てを立てた。勿論、大部分は発売禁止になるような珍なシロモノばかりだ。それで、いわゆる「秘密出版」ではないのだけれども、「公然の販売網とは別に、秘密の配布網を通じて本を流し、その儲けを、「労働組合評議会」の資金部に注入する。元々、この企画には、初めから評議会幹部の某々氏なども参画していることで、「ワイ本」の翻訳出版といえば気がとがめるかも知らんが、左翼労働組合の逃走資金調達に貢献したと思えば、むしろ「階級的誇り」をもってしかるべき
『風雪新劇志 : わが半生の記』佐々木孝丸 著.現代社, 1959. p.106