書物蔵

古本オモシロガリズム

通達が来たときにゃあ、まじめにやるけどねぇ

禁止出版物の差押
禁止出版物の差押に関しては平素励行せられつつありと信ずるも、動もすれば形式的に流れ之が執行の徹底せざる嫌ありて、往々禁止出版物にして公然店頭に陳列販売せられ又は倉庫内に隠匿せらるる等、最近の事例に観るも遺憾の点少からず。之が原因をを調査するに差押通達接受の直後に於ては其査察点検周密なるを常とするも、時日の経過に伴ひ之を閑却したるに由るもの多きを以て、単に差押命令接受の直後のみならず継続視察を為すと共にさらに時々一斉的に査察点検を志向する等、以て差押の徹底を期せられたし。
『警視庁事務年鑑. 昭和7年(部外秘)』警視庁総監官房文書課記録係 編 印刷:圀佑社 非売品 昭13.6 
第5節 検閲課 p.103

これを分析すると次のようなことがわかる。

  • 売店(書店、古書店)の店頭に、ふつーに発禁本が並んでいることがある。
  • 出版社の倉庫に発禁本が隠しておかれていることがあり、それを警視庁がたまにみつける。
  • 警視庁から「差押通達」を受け取った直後はまじめにやるが、所轄署は時間がたつと「閑却」する傾向にある。あまりまじめに「査察点検」しない。