(2014.7.26UP)
もう物故した人の書斎。
何年振りにここで読書しただらう。
考えてみれば、小学校時代毎年この部屋で読書したんだった。いまでもそこはなとない線香のかほりとともにこの部屋での読書を思い出した。
自分の教養のひとつに軍事趣味があるが、じつはこの軍事趣味はこの書斎にあった『一億人の昭和史』によって拡張され、一般風俗史ないし一般政治史にまで至ってゐたのだなぁと改めて気づいた。
線香のかほりがするのは、隣の座敷に仏壇があり、標準的日本家屋の常として、仏壇の上には軍人姿の肖像やら先祖の遺影が掲げられ、供養が欠かされていなかったから。
わちきのバヤイ、戦死した親族はいなかったし、きはめて現代的な――といっても、昭和50年代の現代ね――生活をしとったので、仏壇を中心に構成されるような生活様式といふのと無縁で、遊びに行くといつも、「これが標準的な家なのだなあ」と思ったことぢゃった。
毎年夏休みに遊びにいくてふことから、記憶にあるのは蝉の声と軍艦。といふのも、ちかくに米軍がをり、フェンスの向こうでプラモを持ってあそぶ子供たちをフェンスのこっちがはから見たりしてた(。・_・。)ノ
昭和50年代当時はハイカラな生活をしとったので、ちゃんとGEの家電などがあったけど、それでもなおアメリカさんは(エアフィクスのプラモなどを含め)あこがれの対象であったことですよ(*´д`)ノ
そのアメリカさんと戦った軍人さんの肖像は、いまもそのまま。変わったのは書斎が物置になっとったのと、書斎の持ち主が肖像となって並んだこと。この方は某国営企業に勤めとって、時代考証的なことが仕事に関係しとったから歴史系の、それもビジュアル系の資料を教養として揃えとったといえやう。そのスジでは実は有名人で、業界叢伝にとりあげられたこともある。西田敏行氏らが見舞いにきたとか。今回行ったら、なんと、十年ほどまへの明治古典会目録がころがってをり、じつは今のわちきに一番ちかい趣味だったのかも…とびっくりしたことぢゃった。
この書斎もあと1代はそのままだらうが、その先には解体されることだらう。蔵書一代ならぬ蔵書二代説はわちきの唱えたところである。
いま『一億人の昭和史』は古書価500円前後で投げ出されとるが、はっきしいって一昔まへの読書人はみな、見たことがあった本だと思ふ。あたりまへの常識として、このシリーズの画像を――たとへば、サイパン島で戦争にまきこまれて死んだ小学生の無慚な死体写真なども含め――知ってゐた。
いまCiniiをみると、昭和50年5月刊の『満州事変前後 : 孤立への道』から始まって、昭和59年の『昭和流行歌史('85最新増補版)』まで続いとるね。
「日本の戦史」「日本植民地史」といった主題別のサブシリーズや、「日本船舶史」といった1冊の主題特集などもあり、すばらしいシリーズぢゃった。
いまの日本読書人が手に取れないとすれば、それは出版人や図書館人の怠慢かと思ふ。