書物蔵

古本オモシロガリズム

論文ほめたりケナしたり:戦前期出版統計に関する牧野論文

牧野正久「年報『大日本帝国内務省統計報告』中の出版統計の解析(上)(下)」『日本出版史料』1、2(1995、1996)
これの読みづらい理由がわかったよ。構成は上下あわせて次のとおりなんだけど。。。

A 四つの時期に区分される内務省(内閣制度発足後)の出版統計
B 半世紀に亘る出版統計を総覧して
C 『統計報告』における類別の変遷
D 類別統計の内容の紹介
E 『統計報告』に先行するものと後続する統計
F 『出版統計』に対応する書名と誌名
G 版権免許、版権登録から著作権の登録へ
H 図書・雑誌の発売禁止と発行の抑圧

まずこの論文、主題が2つになってしまっている。

  • 残された史料から明治8年から昭和20年までの出版統計を復元すること、と
  • 類別統計における項目の変遷や数値の増減を見ること

の2つがごっちやになっている。すでに項目レベルでも、前者(本当の主題)がA,B,Eで、後者がC,Dと順序がごっちゃになっているだけでなく、本文レベルでも両者がごっちゃに出てくるので、個々のパラグラフの記述内容はそうヘンじゃないのに、順番どおりに読むと理解できないようになってしまう(順番どおりに読むと理解できないから、これは論文ではなく研究ノートなのだ。。。ってホントーか?(σ^〜^))。
さらに、F、G、Hは上記2つの主題とも異なるその他の主題なので、ますます読者をまどわしてしまう。本当ならこれは3つの論文になるべきもの。これが最大の問題。
また、出版統計に限っても、

  • 各種の資料から、(論者の責任において)統一的な出版統計表を一つ作成する、というものなのか、
  • 大日本帝国内務省統計報告』に出てくる出版統計を分析すること、なのか、

どっちつかずになっているのも方法上の問題である。
実際に牧野氏がやっていることは、論文のタイトルに反して各種資料から(つまり『報告』は史料のひとつにすぎない)、あらたな出版統計表(明治8−昭和20)をひとつ創ることである。そして創られた新しい表が表2ということなのだ。
表2がこの論文の主要部分であり、本文はそれにぶら下がったノートとして読まねばならない。
また読む場合にも、「類別」は第二主題でしかないので、「類別」と出てきたらそのパラグラフは基本的に無視してまずは年度ごとの出版点数の脈絡をつかむことが必要だ。
個々にはいろいろオモシロいことを指摘しているが(たとえば出版雑誌の年間統計数は、点数ではなくて号数だったとこと)。
この論文は全体構成が最大の問題で、ここの指摘に関しては概ねオモシロく、問題は少ない。あえていえば、新聞雑誌を新聞紙法の統計から切り出す場合に、もっと慎重にやるべきだろうと思われるところ。って、こんなこと言っても誰もわからんか。。。