書物蔵

古本オモシロガリズム

オタどんに触発されて新史料――川柳を読書史に転用すること

オタどんに触発されて、新しく史料を開発せんとて、川柳の本を読んでみた。いろいろ開発できたのでここにメモる也。



  • 川柳作法 / 木村半文銭 著. 湯川明文館, 1926 <911.4-Ki179s>

市街地図行李のいつち上に入れ 路郎 p.227
講義録追つ立てられるやうに着き 水平坊 p.229
講義録自警なんどを貼つておき 悠々
手をあげた昔なつかし講義録 半文銭
夕刊の押し売り親を振返り 水府 p.236
橋の名をよく知つてゐる夕刊屋 路郎
発売禁止の気分なり枕許 半文銭 p.249
※柄好みすぎて万引気づかれる 半文銭 p.253
番附に留守番は目をいばたゝき 南北 p.259
番附を安ふ扱ふ切落とし 五葉
それがしの名を番附で引合せ 当百
名刺受けあけりや御近所斗り也 汀果 p.267
訳本も読める母親乳が出ず 海三郎 p.271
新聞の日付見てから包む也 水丁 p.280
新聞へ向ひて一とまづ閑になり 丁子
新聞屋小言を背へ聞て行き 花水洞
今朝の事夕刊を見て負けになり 笑久保 p.281
つゞきもの読み終る頃歯が磨け 天眠
号外が来る盲は聞きたがり 蔦子
夕刊の上にさや豆皮になり 四洋
号外を横からさきによんで行き 同〔半文銭〕 p.386〔286?〕
紙屑屋十年前の事を云ひ 美扇 p.290
紙屑屋もしやそれなら気が狂ひ 半文銭
天才は他人の本で間に合せ 竹人 p.294
※掘出して夜店を早い足になり 緑天 p.305
二上りといふを手帳で教へられ 雲雀 p.309
絵葉書で見ると別府は湯気斗り 路郎 p.312
初めての月給とある日記帳 水府 p.389
雑誌屋へ帰りに廻る薬取り 同〔寛汀〕p.395
新聞で見ればお米は安い也 松窓 p.410
小説に妻と意見が違う也 鞍馬 p.411
欄外になつたと聞いて起上り 同〔蝶哉〕 p.416
古本屋辞書の署名を見逃さず 同〔蝶哉〕 

著者の木村半文銭とは

木村, 半文銭は『番傘』(1913.1-)の創立同人。

  • 岸本水府「半文銭逝く」『番傘』43(5)p12~14(1954-05)

これによると、本名は木村三郎。「昭和二十八年師走の候病死」と近江の川上日車君から手紙があったという。「私より四つ年が上だから今年六十六歳」。「明治四十二年の関西川柳社の例会で初めて会つた頃は、木津の大国町で酒屋をしていた」が、その後は出版業者になったという。
木村, 半文銭
https://id.ndl.go.jp/auth/ndlna/00030873

  • 大正新川柳大全. 大正新川柳大全刊行部, 大正4 <特279-227>

リーダーの読めるが其処の姉御分 餘念坊

序文で明治大正の川柳集がないのだが必要なので作ったとある。

  • 川柳昭和九年特選集 / 和田天民子 撰. 川柳倶楽部社, 昭和10 <特257-907>

新聞雑誌
三面に小さく見える人情味 静豊 p.80
匿名の投書へ筋が通りすぎ キョウ華
家で見た新聞をよむ応接間 不浪人 p.81
化粧談まで読切つて一人ぽち 千樹路

オタどんに触発されて新史料 しょもつぐら