書物蔵

古本オモシロガリズム

図書館の閲覧統計(多読図書)とベストセラーは一致するか?

例の神戸高商由来の新聞DBにオモシロき記事(´・ω・)ノ
「座談会 三六年の出版界を語る」『報知新聞』1936.12.12-1936.12.19 (昭和11)

図書館と出版界
林 図書館の閲覧の方からいいましても矢張り文学物が何といっても王座を占めていますね。特に目立つことは復古的思想と申しますか、江戸文学や明治時代初期のものが大変読まれているようであります。
島中 こういうことはありませんか。図書館で読まれた本が概して世間でよく読まれたものだといえましょうか?本当に読みたいと思う本はてんでに買って読んでしまって図書館で読むものは買うものなんだから図書館で読んで見ようという傾向のものと思います。
下中 私もそう思います。
庄司 いや、図書館で読まれるものはよく売れています。
山本 図書館は何千とあるが、島中さんのいうことは本当じゃないか。
庄司 買えないから図書館で読むということは特別な部類じゃありませんか。
島中 大体において売れる物は誰しも要求があるもので、図書館で読まれることもありますけれども、私共の経験によると非常に売れたものは必ずしも図書館ではそう読まれて居らぬ。
林 私は出版界の傾向と一致して居ると思いますが。
山本 一致して居ないようです。
林 恐らく図書館へ文学物だけを読みに来る人は比較的小部分だと思うのです。
山本 あなたの処の統計を関心を以て見て居りますが率がどうも合わぬのです。今島中さんのおっしゃったようなのが本当じゃないかと思う。文学書でも社会物でも非常に数十万数千万と売れたものが上に立つ時が多い。
林 それは比較的わざわざ図書館に来てまで勉強なさる方は矢張り少し違うかも知れません。外の部門、殊に最近は宗教書が割合に数年来盛んであったのが、宗教聖典物が比較的少なくなり偉人伝記物、こういうものが後続いて盛んになり、続いて化学物、殊に通俗化された科学的図書が読まれるという傾向は矢張り一般と同じことだと思って居ります。文学の方だけを取りますと如何かと思いますが

参加者は次の通り。赤本屋系の淡海堂が呼ばれているのもオモシロ。林繁蔵(ハンゾウ)も、長生きすればもっと図書館史で有名になったのになぁと。

それはともかく、山本のいう意見が正しそうに見えるが、そうしたって結局、出版業界側には統計がないんだからせうがない(´・ω・)ノ