書物蔵

古本オモシロガリズム

猫の刷部数

1905(明治38)年1月、俳句雑誌「ホトトギス」で発表され、翌06年8月まで連載。単行本が05〜07年に3分冊で出された。定価は上編95銭、中編と下編が各90銭。同図書館によると、1冊の値段は現在の1万円弱に当たる。
 領収証は同図書館が70年ごろに古書店から入手して所蔵。今年5〜6月、東京で初展示された。
 領収証の日付は下編の刊行から3カ月後の07年8月24日で、版元の一つ、服部書店主の服部国太郎宛て。上編10版の1000部▽中編5版の1000部▽下編1〜4版の4000部−−計6000部の印税997円50銭を受領した内容で、本名「夏目金之助」の署名と押印がある。印税率は単純計算で約18%。07年は漱石が教職を辞め、職業作家の道を歩み始めた年。6月から「虞美人草」の連載が入社した朝日新聞で始まったが、「吾輩は猫である」の印税は大きな副収入だったことを示す。