書物蔵

古本オモシロガリズム

「多摩市立図書館複写拒否事件」と、レファ本

「大項目主義」とか「小項目主義」とかあるけれど、レファ本の1項目は1著作物なのか、といった疑問は、むしろここ20年の新しい問題だったりもする。
そのきっかけになったのが1993年7月下旬、多摩市立図書館の窓口で発生した、

「多摩市立図書館複写拒否事件」

これは利用者が次の本のある項目全部を複写しようとしたら、多摩市立図書館に止められ
た事件。
・久保慶三郎 [ほか]編集. 土木工学事典. 朝倉書店, 1980.9. 838p 【NA2-146】
最高裁>裁判例情報で、ホムペ検索すると次の2件が出る(判決文もあり)。

利用者が原告となって、項目まるまる複写を許さない多摩市をうったへた!
原告がねばって高裁までいってるけど棄却されている。
原告はいろいろ図書館にクレームをつけてゐるけれど、わちきが興味ある、辞書の項目のとこだけいふと、地裁の判決文でつきている。
長いので要所を引用すると次のとおり。

 原告は、本件著作物は共同著作物の性質を有し、全体が単一の著作物であるから、その中の任意の一部は単一の著作物全部には当たらない旨を主張するが、本件著作物は、各項目毎にまとまった内容を有しているものと窺われかつ著作者が明示されており(甲四)、〔略〕原告の右主張は理由がない。
 してみれば、原告の請求した本件複写請求部分は、著作物の全部に当たるものであって、「著作物の一部分」の複製物の提供を認める著作権法三一条一号の規定に当たらないものというほかはなく、その全部の複写を求めた原告の申込みに対し承諾しなかった被告の行為に違法性はない。

サイニーひくと1個だけ論文が出るな。
村井麻衣子「多摩市立図書館複写拒否事件の検討 -米国著作権法フェア・ユースに関する裁判例・議論からの示唆を踏まえて」『図書館情報メディア研究』9(1)/p.17-34, 2011-11;
ざっと読むと、米国のフェアユースもどきが日本でも認められるべき、としてゐるが、結局、日本ではフェアユースもどきはつぶれたと、山田氏の本に書いてあったな。