書物蔵

古本オモシロガリズム

キミねぇ〜 かういった心づもりで雑誌を出すんだったら、

柴野先生の論文を読んでたら、オモシロな記述を見つけた。同志社で戦後、ドイツ流新聞学を展開した和田洋一の回想。

  • 和田洋一「「世界文化」同人の体験--ねずまさしの回想にふれて」『思想』(633)p428〜437(1977年03月)

 創刊号が刷りあがったあと、編集兼印刷発行人の富岡益五郎が納本のため京都府庁に出頭したところ、係りの役人がページをぱらぱらとくって、さいごの編集後記にも目を通した。そこには世界文化の情報を今後成るべく多く載せたいと書かれていた。係りの役人は、そういう心づもりで雑誌を出すのなら、事前に保証金を納入してもらわねばならないと言った。富岡は、寝耳に水だったので、引きかえして新村猛、久野収に事情を報告し、同人たちを集めて保証金五〇〇円をどうしてつくるかの相談をした。
 私は、その会合の連絡を受けなかったし、従って出席しなかったが、ドイツ文学の雑誌『カスタニエン』を創刊したときの経験で、保証金のことは知っていた。(略)

大学の教員、つまりインテリばっかの同人で、戦前世界ではむしろ物識りに入るような人々なのだけれど、出版業界人でない一般人の認識って、こんなものだったのだろう。
それよか「京都府庁」の「係りの役人」は何掛だったのだらうか(。´・ω・)?
出版雑誌のつもりだったのなら、2部を届書2枚と一緒に東京の内務省に郵送すればいいわけだから、なんで京都府庁に行ったのかわからんなぁ。まあ和田の証言はあとからの又聞きの、それまた数十年後の回想だからなんともいえんが…(゜〜゜)
いちおー新聞紙法で届けるつもりだったんなら、内務省2部届書2枚、京都府庁警察部1部、所轄署1部、地方・区裁判所各検索曲に各1部、総計6部を納本せねばならないが。
わちきも京都府庁警察部の窓口で、「ページをぱらぱらとくって、さいごの編集後記にも目を通し」、

キミねぇ〜 かういった心づもりで雑誌を出すんだったら、新聞紙法依拠雑誌になるわけなんだから、事前に500円の保証金を入れてもらはなきゃコッマルンだよなぁ〜(σ・∀・)

って言ってみたいo(^-^)o
などといふてをるバヤイではなく、ここに記録に残ることがめづらしき各県警における出版警察係の窓口実態が回想されてをるわけである!`・ω・´)oシャキーン
ん?(・ω・。) 京都府庁警察部…… 資料残ってないかなぁ…… ねぇ

 『世界文化』の同人は全員法律にはくらく、新聞紙法第十二条に「時事に関スル事項ヲ掲載スル新聞紙」は、保証金を納めなければ発行できないと記されていること、そして新聞紙概念の中には、雑誌も含まれていることを知らなかったのである。ねずまさしは、『思想』一一月号で「学問・芸術のことばかり掲載する本誌が、政治雑誌なみの取扱いをうけたことを知った同人は驚いた。」と書いているけれども、政治雑誌だから保証金ではなく、「時事ニ関スル事項」、つまり世界の文化に関する新しい情報を掲載する雑誌だから保証金を納入せねばならかなかったのである。