書物蔵

古本オモシロガリズム

『文化情報資源と図書館経営』かけ足で読んだ

出たばっかりのコレ。文化情報資源と図書館経営: 新たな政策論をめざして: 柳与志夫

文化情報資源と図書館経営: 新たな政策論をめざして

文化情報資源と図書館経営: 新たな政策論をめざして

本朝初の…

この本は「図書館経営と文化情報資源政策に関するわが国初めての*1理論的な論集である」と序文p.iii*2にある(・o・;)
読後の感想はいくつかあるけど、いちばん重要なのは、意外と――といふのも初出は1980s初頭のものあるので――今の議論だなぁといふこと。この原因は2つあって、著者にもともとそのやうなスタンスがあることと(これは序文でも指摘されている)、著者自身が指摘するように(日本の)図書館情報学における経営論の理論的蓄積がほとんどないことによる。

インテグラル…

あと技術的なものとして、論集にもかかわらず、最小限のメンテがされとるので、統合的に読める、ちゅーか読後感が1冊の著書を読んだ感じにチャンとなる。論集ってば、ただの論文の並列であることがほとんどなんだけど、経営論にかかわるサブジャンルがまんべんなく拾われているうえ、相互参照と各セクションごとの新規解説を――これがフツーの論集だとないことが多い――つけとるので、インテグレートされとる感じである。この本は最初「これからの人がリファーできるように」に企画されたとあとがきにあるが、かようにインテグレートされとるとは企画者もびっくり(σ・∀・)

縮尺といはんか

だから各論で、古く書かれた論文の事例は同時代の今となっては古いものなんだけど、論旨そのものはすごく今風に感じられるのにはビックリ(´・ω・)ノ
これは、記述的、帰納的に議論をすすめとらんからだねぇ。
理論的、演繹的でありながら、悪い意味で抽象的にならないのは、日本社会という構造の中での図書館経営の、ありうべきありかたを論じているからか。縮尺といはんか焦点の設定がうまいのかしら。

ウラ読みも…

昨今、日本図書館情報学の学会誌で歴史研究ばかりの割合が殖えとんのはマズイのではと指摘もする本書でありながら――実際、この本のウラ主題には学界批評もあるかと――実は図書館史的なヨミができる部分も多くあり、例へば「図書館PRの意義と実践」の章で、「国立国会図書館対外関係小史」(p.254-)は、実はそのまま本朝国立図書館史の時代区分として転用可能である。
各論のここのアイテムは、たとえば先頭に「図書館の自由」批判が来ていてオモシロ。「自由」とか「民主」とか「人権」とかビッグワードをだされちゃふと、途端に思考停止してしまふ御仁がおほいからねぇ業界には。

個人的萌へ〜

個人的には序文にある「三田の中華料理店で四人*3で調査のあれこれについて打ちあわせたことを思い出す」という文章を読んで、わちきのなかでも、赤っぽいレンガ張りの中華屋が思ひうかんだことぢゃった。いやサ、この四人が行った数年あと、わちきもこのお店に行ったんだと思ふバイトがへりに(σ^〜^)

*1:ここに注目すべきとは、ある人に言はれて気づいたc(≧∇≦*)ゝアチャー 

*2:田村俊作「刊行によせて」p.i-iii

*3:あと、糸賀雅児、春山明哲の諸氏とある。