エロ図書館情報学の試み
エロと図書館、あるいはエロと図書館情報学については、ちょっとした文章を『マンガ文献研究』の特集エロに書かせてもらったことがある。
- 書物蔵「エロと図書館 (特集 エロ)」『マンガ文献研究』(2) p.21-16(2010.6)
図書館に所蔵されるエロ文献コレクションについて。図書館のトイレが人を生んだ話(実話)。また、AV女優に転進した図書館員について。
まあエロ文献コレクションについては主に国民図書館に収蔵されるものの話をし、図書館のトイレが人を生んだ話は某大きな大学図書館の事例(実見)であり、AV女優さんは、これは幸いにもAVの特殊領域へはまったらしくいまでもウィキペによれば活動中らしいのだが、それよりもわちき的にオモシロかつ、情報学的によい事例なのは、最後に紹介しておいたAV俳優関係の名称典拠システム(米国の)ね。1990年代文字情報しかないこの典拠を見たときには「これこそ米国図書館学の精華」と驚きうらやましく思ったことだった。2010年代、日本のNIIもNDLもこれに及ばない。
ん?(・ω・。) 知りたいってか(^-^;)
トマソン社へ注文よろ〜
気になる向きは、まだ2号はかろうじて在庫があるみたいだからトマソン社に注文をだされるとよいだろう(σ・∀・)σ
マンガ文献研究 在庫一覧
http://tomasonsha.com/?mode=cate&cbid=1139014&csid=1&sort=n
それはともかく、近代書誌学はジャンルをとわんので、近代エロ本も(まあエロ本といったら近代に限られる表現のような気もするが。あ、「エロ本」は昭和初期からの表現ね。それ以前からある表現は猥本(わい本)とか艶本とか)、トーゼン記述対象になる。
AV抄録誌の正統だった「オレ通」
そこでエロジャンルの抄録誌の話のつづきをしたい。
生前、布川先生が(まあ先生は謹厳実直なキリスト教徒だからね)顔をしかめたといふ10万部雑誌の抄録誌「オレンジ通信」を調べようとしたらば、思った以上にわからない。
サブカルに関してはかなり使えるヰキペでさへ、
オレンジ通信(-つうしん)
オレンジ通信 (雑誌) - 成人雑誌。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E9%80%9A%E4%BF%A1
とあるきり。説明にもなにも。
ここぞとばかりに、なんでもあるというフィクションで成り立つ国民図書館はどうであらうかとOPACをみると。
資料種別 雑誌 請求記号 Z31-721 タイトル オレンジ通信 / タイトルよみ オレンジ ツウシン. 責任表示 東京三世社 [編]. 巻次・年月次 [ ]〜. 出版事項 東京 : 東京三世社, [19--]- 形態/付属資料 冊 ; 26cm. 注記 本タイトル等は最新号による. 刊行頻度 月刊 全国書誌番号 00043548 団体著者標目 東京三世社. 本文の言語 jpn 刊行状態 u : 刊行状態不明 国名コード ja 書誌ID 000000043070 所蔵情報 4巻1号(1985年1月)〜10巻2号(1991年2月) (欠: 39,41〜43,45〜48,51,54,55,57,62,63,65,67〜69,71,72,74,76,79,81,82,89〜100,102号)
うーん、かろうじて、1991年までは続いていたといことがわかるのみ。ほとんど何もわからんし、最終所蔵1991年って、そのあとでも見かけたような気がするが。。。(゜〜゜ )
2009年に終刊とぞ
全国書誌がダメとなれば、しょうがないので販売書誌を、とてアマゾンを見ると。
オレンジ通信 2009年 04月号 [雑誌] (2009/1/27)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B001PAGSD2/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1370846599&redirect=true&s=books&sr=1-3
のデータがあり、その書影(表紙画像)を見るに、どうやらこの2009年 3・4月合併号が終刊号らしいことがわかる。
幸いなことに、終刊にいあわせた人のブログ記事がネットにあり、それを読むと、
http://rioysd.hateblo.jp/entry/20090128/p1
・27年間続いたこと
・終刊号には年表など資料的な記事があること
・略称は「オレ通」であったこと
・類似誌に「アップル通信」「さくらんぼ通信」「バナナ通信」「マスカットノート」「レモンプレス」があったこと。
・類似誌の総称は「フルーツ系誌」
・オレ通が最初でなおかつ最後であったこと
などがわかるありがたい記事である。さすがこの人は著作があり、そういへば出たばっかりの頃、購入して読んだことを思い出した(^-^;) 良い本だと思ったことを憶えてるよ。
エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること (NT2X)
- 作者: 安田理央,雨宮まみ
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「フルーツ系雑誌」は「抄録誌」だった(σ^〜^)σ
結構いいかげんな記述が多くて、概念規定がヤワなものがあり、院生のバイトが多いのかといぶかしく思われちゃふ『図書館情報学辞典』によれば( ≧∇≦)ノニャハハ、
抄録誌 abstract journal
〜主題分野の体系順に文献の書誌データと抄録を排列した定期刊行物。〜抄録作成に手間と時間を要するために、抄録誌が作成される専門分野は限定されている。
うむ、まさこの抄録誌の概念規定が「フルーツ系雑誌」あてはまる(σ・∀・)σ
文献(literature)も、workもほぼ同じ意味だしね。
しかしなぁ、『出版年鑑』には雑誌一覧にでてくるけど、「読み物」なんちゅーたわけた分類になっとるし、大変意外なことに「雑誌新聞総カタログ」には出てこないし、こんなオモシロな図書館現象がまったく知の体系に掬われてこないとは嘆かわしい。。。
ん?(・ω・。)
マジですよわちきハ(。・_・。)ノ
いやこれホントにホント(σ^〜^)
一般に
これはメディア史研究全般に応用できる知識なんだけど。
このまへ、研究といふのは趣味の一形態(きはまったもの)にすぎなくて、その前駆形として趣味があるといふことを言ったけど、エクストリームといはんか、エクストラオーディナリーなもんは(まあHジャンルでいへば、「キンキー(kinky)」なものは、マニアがつくので意外と研究の素地があったりもする。
これもまた、昨日、言及したやうに、SMなどといふextremeな趣味を通じてstraightな事態を捕捉するといふことになる。
一般的な、ストレートなもの、ありふれているものほど、キチンとした記録は残らない。
ストレートを記述しうる例外事例が採取できりゃあ、まだいいんだけどね。
ってか、わちきが最近こってをる発禁や検閲史も、別に言論の自由が何とかとか、人民を抑圧した悪いやつとかを糾弾したいわけではぜんぜんなくて(^-^;) むしろそれとはサカサで、フツーの出版物の歴史を調べたいからなんだわさ(σ・∀・)σ
って、ギンズブルグが同じやうなことを言っていたと森さんが言うとった(*゜-゜)
要するに、全国の零細書店にも配本されていた抄録誌の歴史も、後から調べるのは結構、大変で、研究の基となる基礎データから自分で作らないといけない。
ホントはかういった研究をするために、価値判断を方法論的に停止した蒐集をする国民図書館があるんだけど、どうやらあそこの連中、自分たちのミッションを、ただの大きな図書館と勘違いしているらしく、かういった国民図書館ならではのことに結構、役に立たない。
上記、「オレ通」も欠号だらけだけど、ほかに列挙されとる類似誌のほとんどが、そもそも納本されとらんみたいだ(*´д`)ノ
日本近代書誌学の祖といってもよい少雨荘こと斎藤昌三も、あんだけ列挙できるだけで大したもんだよ、とは分析ずきな森さんだったような気もするが。
列挙できるというのは、たいしたもんであるわけで。専門家や研究への第一歩。
ん?(・ω・。)
まてよ…
あれっ?('0'*)
「ビデオtheワールド(ビデオ・ザ・ワールド)」はぁ?(σ^〜^)σ
なんちて(;´▽`A``
と、笑ってるバヤイぢゃない
いま上記、ビデオザワールドをググったら、なんと先月号が最終号とぞΣ(゚◇゚;)
http://jogjob.exblog.jp/20007232/
やはり一つの時代の終焉なのか。。。(*゜-゜)