書物蔵

古本オモシロガリズム

プリントとは何か

えーっと、これは『出版概況』だったかな?
手許のコピーをみると、

尚ほ昭和十年の出版物の納本の上に於て注目すべきは、官私諸大学、専門学校に於ける教授、講師の講義を謄写版其他にて印刷したる所謂プリント類、及び「印刷を以て謄写に代ふ〔」〕との文字を附したる出版物の納本数が極めて増加するに至つたことである。

こんな記述がある。

プリントとは

プリントとは、大学や専門学校における講義内容を謄写版などで印刷した出版物のこと。
といえませう。

前者〔プリント類〕は従来納本極めて少なかりしが、機関説問題の紛糾と共に大学、専門学校に於ける教授、講師の憲法に関する教授内容が相当問題になり、之れに関連してかゝるプリントに対する取締を強化するに至りたるに依り、その納本の増加を促すに至つたものである。

とりあへず、雑索データがじゃまなNDL-OPACで拾ってみたところ、次のような出版社や印刷所が出していることがわかった。

帝大プリント聯盟
プリント刊行会
文精社
東京プリント刊行会
プリント社 京大
京都プリント刊行社
中大プリント同盟会
東山堂書房
三田書房謄写印刷部 慶応
竹内謄写堂

代謄写の読み

で、実はここで話題にしたいのはプリントの話ではなくて、それと一緒に書かれている

「印刷を以て謄写に代ふ〔」〕との文字を附したる出版

とあるところ。
つまり、読み方を内務官僚が我々に教えてくれているわけだ。

後者に関しては、「印刷を以て謄写に代ふ」なる文字は出版法上何等の意味を有するものに非ざるにも拘はらず、出版法上納本を免かれ得る便法と妄信せる人達に依つて、従来殆ど納本せらるること少なかりしが、機関説論争の紛糾に関連して、これらに対する取締強化と共に、その納本の増加を見るに至つたものである。

代謄写」ものが昭和10年以前、ほとんど納本されていなかったことがこれでわかるね。